平成28年4月14日
技術職員が全国の研究機関などから集まり情報・意見交換を行う「KEK技術職員シンポジウム」が3月16日にKEKつくばキャンパスの小林ホールで開かれました。今回は「技術職員のプレゼンスの向上」をテーマに、各機関における技術職員の取り組みや成果などについて報告、意見交換を行いました。また、実験装置の開発、維持など広範な技術的研究支援活動について発表、意見交換を行う「KEK技術研究会」も引き続き2日間にわたって開かれ、38機関(大学、国立高等専門学校、大学共同利用機関)から219名が参加しました。本シンポジウムは、技術職員が一堂に会する機会としては、全国で唯一の貴重な機会となっています。
技術職員シンポジウムでは、技術職員の仕事の質を向上する取り組みなどについて6機関が具体的な内容を報告しました。技術職員は研究活動を技術支援する上で欠かせない存在です。ただ、その役割や重要性は一般にはあまり知られていません。全国の研究者数が年々増加しているのに対し、技術職員数は減少しています。今回のシンポジウムでは、技術職の仕事の質を向上する取り組みなどを行う「技術支援センター」を発足させた長岡技術科学大学が、センター発足から4年間の取り組みを紹介し、他の大学がこれから同様の取り組みをする場合の参考になる発表となりました。
写真1:放散虫のガラス模型(著者:扇 充、東北大学 理学研究科・理学部 硝子機器開発・研修室)
また、技術研究会では、実験装置の開発、維持の話題から改善、改良の話題に及ぶ広範な技術的研究支援活動について各機関が発表、意見交換を行いました。自然科学研究機構の計算科学研究センターでは、空調消費電力の削減対策の結果を発表しました。同センターでは現状を可視化するシステムの構築や空調室外機への自動散水などで施設全体の消費電力量をピーク時より22%削減することを達成しました。スパコンの運用にあたり電気代の高騰は近年問題となっており、他の機関でも大変参考になる発表となりました。また、東北大学硝子機器開発・研修室では、大学理学部の自然史標本館に展示するためにその高いガラス加工技術を生かして「放散虫のガラス模型」を製作しました(写真1)。質感や形状の精巧さなど、標本模型として限りなく本物に近い形で再現することで、学生や一般の見学者の方に放散虫という生き物に興味を持ってもらえるユニークな取り組みとして参加者の興味を引いていました。KEKからも、J-PARCのハドロン実験で用いるフロン14を使ったフッ素標的の開発技術や、放射光施設PF-ARのビームラインのひとつで、高熱負荷がかかる「AR-NE1」で用いるマイクロチャンネル分光結晶を、間接冷却条件下で使用するための条件の検討結果が発表されました。
技術職員シンポジウムは、全国の大学機関の関心の高いテーマを提供し続ける技術職員のセンターとしての役割を求められていると同時に、技術研究会を含めて、その企画、運営、組織力が高く評価されています。
技術職員シンポジウム開催の様子