ILCの中央領域に関する国際合同会議を開催

 

現在計画中の国際リニアコライダー(ILC)※の「中央領域」と言われる部分について検討を行う国際合同会議が、4月19日、20日の2日間にかけて、KEKつくばキャンパスで開かれました。「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」(国際的なリニアコライダー関連の活動の調整と推進を担う組織)のディレクターであるリン・エヴァンス氏が招待され、テレビ会議による参加者を含め日本、アメリカ、ドイツ、中国、欧州合同原子核研究機関(CERN)から25名が参加しました。

中央領域は、ILCの2つの主線形加速器にはさまれた長さ5kmあまりの区間で、電子源、陽電子源、ビーム伝達・最終収束システム、衝突点などが含まれています。この中央領域に関しては、すでに世界各国の研究機関や大学において研究実績がありますが、2012年に公開されたILCの技術設計報告書では、ILCの建設に特化した詳細な研究内容はまとめられていませんでした。そのため、TDRの完成後のILCの実現に向けた活動の一環として、昨年11月にLCCが中央領域ワーキンググループを設置。リーダーにKEKの横谷馨名誉教授が着任し、今年5月30日から6月にかけてスペインで開かれるILCの国際会議「European Linear Collider Workshop(ECFALCワークショップ)」までに、建設に向けた基本計画を完成させることを目標に、世界で行われてきた研究・検討の取りまとめと、今後取り組むべき課題の洗い出しが行われてきました。

今回の会議は、ECFALCワークショップを前に最終調整を行うために企画されたものです。会議の冒頭、まずリン・エヴァンス氏が「今日はこのワークショップに参加することができて嬉しく思っています。特に陽電子生成技術の進捗に興味を持っており、皆さんの発表を清聴します」とあいさつ。KEKからは、ILC中央領域における重要な研究開発項目であるビーム伝達・最終収束システムの試験ビームライン「ATF2」の研究の進捗状況が報告されました。

なお、中央領域は多くの構成要素が複合的に設置される場所になるため、トンネル等の施設設計担当者との密接な協調が必要となり、技術課題の一つである陽電子源についても議論が必要です。そのため、今回は施設設計の担当者や放射線管理の専門家、および陽電子源グループとの合同での開催となりました。


後列右から4人目のリン・エヴァンス氏、前列右から2人目の横谷馨名誉教授とILCの中央領域に関する会議の出席者

※全長30kmを超える直線状の地下トンネルの中に設置される大型の衝突型加速器。素粒子の質量の起源となるヒッグス機構やダークマターの正体の解明を始めとして、多くの素粒子物理学の未解決問題を解き明かすために、超高エネルギーの電子・陽電子の衝突実験を行う。

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