KEKキャラバン、8月は千葉、三重、茨城、静岡に、9月は愛媛に派遣

 

KEKでは学校や社会施設などで行われる授業のサポートとして、地方自治体、NPO等の団体が企画する講習会や勉強会などに講師を派遣しています。8月は5件(千葉、三重、茨城、静岡の4県)、9月は1件(愛媛県)で実施しました。

(1)8月17日(水)、千葉県立佐倉高等学校(千葉県佐倉市)
「加速器って何だろう~高エネルギー加速器研究機構の紹介」と題する講演を実施し、1、2年生18名が参加しました。講演では、加速器とはどのようなものか、何をどのようにして加速して何をしているのか、何が明らかにされるのか等の説明を実施しました。その後、その加速器があるKEKのつくばキャンパスと東海キャンパスの研究施設や内容をビデオを交えて詳細に説明。最後に次世代加速器としてILC(国際リニアコライダー)についても紹介しました。アンケートでは、「加速器が宇宙など、自分の想像の中では思いつかなかったものが関係していたことに驚いた」、「宇宙のことがもっと解明されていくと思うとわくわくします」などの感想が寄せられました。

(2)8月18日(木)、三重県立鈴鹿青少年センター(三重県鈴鹿市)
1、2年生99名を対象に、「宇宙の歴史に迫る 巨大装置 加速器」と題する講演を行いました。講演では、原子核の発見を例に、物の最小単位をどのように発見するか説明。その過程で必要な知識である量子力学について簡単に解説しました。ニュートリノに関わりの深いJ-PARC(大強度陽子加速器施設)の研究を紹介する際、2015年の梶田隆章氏のノーベル賞に関して、かなり詳しく説明しました。また、研究職につくためのキャリアパスや、KEK職員の普段の業務(物理だけでなく、電子回路やプログラムもつくったりする)についても紹介しました。実施後のアンケートでは、「一つの式で全ての現象を説明するのはとてつもなく難しいことだと思いました」、「勉強は既知の領域、研究は未知の領域、という言葉が印象に残りました」などの感想が寄せられました。


千葉県立佐倉高等学校で講演する宍戸寿郎 先任技師


三重県立鈴鹿青少年センターで講演する栗本佳典 助教

(3)8月19日(金)、茨城県立下館第二高等学校(茨城県下館市)
2年生80名を対象に「宇宙のはじまり、ビッグバンと加速器」と題する講演を実施しました。膨張宇宙の話から、ビッグバンと宇宙マイクロ波背景放射(CMB)について説明しました。実際にCMBが観測されている事例に触れ、膨張宇宙論が観測による裏付けを得られていることを紹介。その後、初期宇宙を理解するためには素粒子のふるまいを理解する必要があると説明し、素粒子物理を理解することが宇宙を理解することにつながるという説明をしました。これに続いて、素粒子の標準模型を紹介し、現在行われている加速器を使った素粒子物理実験について具体例を示しながら解説しました。最後に研究者になるために必要なことについて自らの経験を踏まえて話しました。実施後のアンケートでは、「『なぜ』を続けることが大切ということがとても参考になりました」、「サイエンスとテクノロジーとの違いや宇宙について図や絵を使って説明して下さったので、分かりやすかったです」といった感想が寄せられました。

(4)8月21日(日)、八千代市立中央図書館(千葉県八千代市)
「宇宙のはじまり、ビッグバンと加速器」と題する講演を実施し、小学生を中心に約30人が参加しました。講演はKEKの紹介からスタート。続いて、ガリレオやニュートン、アインシュタインの業績を紹介しつつ「実験する」ことがどんなことなのか解説しました。人形紙芝居「そりゅうし村のゆかいななかまたち」を上演し、将来の計画ILC実験についても説明を行いました。アンケートでは、「目に見えるものは全て、3つの素粒子からできているという言葉が印象に残りました」、「実験を行うことで本当の姿を知る重要性を学びました」などの感想がありました。


茨城県立下館第二高等学校で講演する三原智 教授


八千代市立中央図書館での実施風景

(5)8月26日(金)、静岡県立清流館高等学校(静岡県焼津市)
2年生33名を対象に、「素粒子と放射線の基礎知識」と題する講演と霧箱観察実験を行いました。KEKの紹介の後、放射線の基礎知識、素粒子・原子核物理について講義を実施。特に最近のトピックスであるニュートリノ振動についてはやや詳しく説明しました。続いて、グループに分かれ、マントルを放射線源とし、霧箱実験を行い、ほぼ全員が飛跡の観測に成功しました。また、「はかるくん」を用いて花崗岩、岩塩、塗装補助粘着材などの各種放射線源の放射線レベルの測定、および校内各所の測定を実施。放射線源からの距離を変えたり、放射線源と「はかるくん」の間にアクリル、アルミニウム、ステンレスなどの遮蔽物を挿入して、放射線レベルの変化を観察しました。実施後のアンケートでは、「小さいものも大きいものも追い続けると一緒になるということが印象に残りました」、「放射線のことについてたくさんの知識を得ることができた」などの感想が寄せられました。

(6)9月9日(金)、新居浜工業高等専門学校(愛媛県新居浜市)
電子制御工学科の生徒10名を対象に「高エネルギー物理実験を支える計算機技術」と題する講演を実施しました。まずは、KEKの概要とその中でICT(情報通信技術)インフラをサービスとして提供する計算科学センターについて紹介しました。続いて、加速器科学実験において、年々増え続ける膨大な実験データ量に対応するために、大容量ストレージシステム・大規模計算システムが必要であり、その実現のためにグリッドシステムを利用して、世界的に分散した計算センターが協調して処理を行っていることを解説。さらに、計算科学センター技術職員の業務とキャリアパスについて具体例を挙げながら紹介しました。講義後のアンケートでは、「KEKでは高エネルギーの研究しか行ってないのかと思っていたので、HPC(高性能コンピューティング)分野の研究を行っていると知ってとても興味を持った」、「講師の方の熱意が伝わりました」などの感想が寄せられました。


静岡県立清流館高等学校で霧箱を説明する佐藤皓 名誉教授

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