岡田尚起技術員、KEK技術賞を受賞

 

岡田尚起技術員(共通基盤研究施設 機械工学センター)が平成28年度KEK技術賞を受賞し、12月20日に表彰式が開催されました。

KEK技術賞は 平成12年度(2000年)に創設され、毎年、複数の応募件数の中からKEKで開発、優れた技術を行った者を表彰するものです。特に審査にあたっては、(1)創造性、(2)具体化への努力、(3)技術的貢献、(4)技術の伝承、の4項目の基準で評価を行っています。今回、受賞対象となったのは、「フラックスコンセントレータヘッドの螺旋スリット加工方法の開発」です。受賞発表会は、平成29年1月19日(木)13時から開催予定としています。

SuperKEKB計画の入射器の改造における大きな目標として、電子ビームの低エミッタンス化と陽電子のビームの大電流化があります。陽電子ビームは以前のKEKB計画時に比べ4倍以上の電流が期待され、新たに設けられたダンピングリングを通して低エミッタンス化を図る計画になっています。陽電子ビームの増強に向けては、より高い陽電子捕獲効率を求めてフラックスコンセントレータ(FC)の開発が進められて来ました。本開発はキーコンポーネントであるフラックスコンセントレータヘッドの加工方法に関するものです。


図2 フラックスコンセントレータ型パルスソレノイドの全体図


図1 クランク装置を設置したFC本体の加工

フラックスコンセントレータヘッドは無酸素銅の円筒中央にコーン状の穴があいていてここに0.2mmという狭幅のスリットを螺旋状に設け、コイル状にします。そこに12kAというパルス大電流を流すことで、5テスラの収束磁場を発生させ陽電子を収束させます。この螺旋スリットは既存の加工技術では加工が困難であるため、岡田氏はワイヤーカット放電加工機に独自の工夫を加え、コイル状の形状に加工することを可能にしました。本開発のポイントは、1)狭幅螺旋スリットを加工するためのクランク機構の開発、2)加工条件の最適化というところにあります。実機の製作では実加工時間で連続約90時間を必要としますが、本開発により加工中のワイヤー断線などのトラブルはほぼ皆無となるとともに、高精度なフラックスコンセントレータヘッドの製作を可能としました。開発されたフラックスコンセントレータは5ヶ月に及ぶSuper KEKBのPhase1運転において安定に陽電子ビームを供給し続け大いに貢献しました。


受賞式写真

参考
岡田尚起、高富俊和、小林芳冶、"フラックスコンセントレータの螺旋加工の開発"、 平成24年度愛媛大学総合技術研究会、松山、2013.
岡田尚起、高富俊和、小林芳冶、"フラックスコンセントレータの螺旋加工の開発"、第14回メカ・ワークショップ報告集、KEK, 2013, 99-101.
紙谷琢哉、岡田尚起、他57名、"SuperKEKB 陽電子源の初期コミッショニングの現状"、第11回日本加速器学会年会、青森、2014, 272-276.

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