秋・冬期の8団体を含め、今年度は20団体586名の高校生らを受入<実習受入>

 

高校生等実習受入事業は、KEKが毎年全国の中学生及び高校生等を対象に、学校では触れにくい研究現場の様子を肌で感じていただくことを目的に、見学、講義、実習を通して自然科学への興味を深めることを目標に実施しているプログラムです。夏期の参加12団体に続き、秋・冬期にも全国から8団体232名の高校生らの参加があり、今年度は20団体586名の参加がありました。見学では、展示ホールで等KEK紹介ビデオを見た後、KEKB展示室、筑波実験棟のBelleⅡ測定器、富士KEKBトンネル、先端加速器試験棟(ATF)、超伝導リニアック試験施設棟(STF)、放射光科学研究施設(PF)を見学しました。講義では、「ニュートリノ研究で探る宇宙の謎」、「重力波で探る宇宙」、「質量の起源ヒッグスを追う」など講師の専門分野の話を聞きました。実習では、霧箱製作、宇宙線観測、分光器製作など、観測や装置の製作を体験し、KEKで行われている研究の原理を学びました。以下、受講の様子を簡単に紹介します。

9月12日(月):米国国防省太平洋地区教育事務所高校生39名
KEKB展示室、BelleⅡ測定器、ATF、PFを見学後、午後は実習で霧箱を用いて放射線を観察し、「Particle Physics」の講義を受けました。実習では、熱心に霧箱で放射線を観測して、飛跡が見えた時に歓声を上げていました。(全て英語による対応)

9月15日(木):岩手県立一関第一高等学校2年生42名
KEKB展示室、BelleⅡ測定器、STF、PFを見学後、午後は宇宙線観測の実習、「ニュートリノ研究で探る宇宙の謎」の講義を受けました。生徒たちから「私はリニアコライダーのことも超伝導加速器のこともよく分からなかったが、今日の説明を聞いて仕組みを理解することができた」、「普段メディアで名前を耳にすることはあってもその何が凄いのか知らなかったので、興味深かった」、「"ニュートリノ"や"加速器"と聞くと、とても難しそうな感じがしたが、理解を深めることができて、とても良かったです」、「今回の研修で、今岩手で騒がれているリニアコライダーについてより興味を持つ事ができた」、「人類が小さな星にいながら、ここまで宇宙について研究を進めていることに驚いた。実際に宇宙全体を見渡せないが、合理性を頼りに、宇宙の起源まで知ろうとしていることに感動した」など、様々な感想が寄せられました。

PFの説明を受ける生徒たち

Particle Physicsの講義を受けている生徒たち

観測写真から宇宙線測定をしている生徒たち

10月26日(水):大阪市立東高等学校2年生17名
半日コース(午前)で、KEKB展示室、BelleⅡ測定器を見学後、実習で霧箱を製作しました。生徒たちから「Bファクトリーを下から見上げてみたかった」、「粒子というあまり私たちには直接関係していないように思える分野の研究だったけど、色々話を聞いていくなかで私たちにも大きく影響するところがあるのだと知れて貴重な体験になった」、「一つの事象を解明するために、様々なものが考えて作られているところで、本当にたくさんの人が関わっているのだろうと思った」などの感想が寄せられました。

10月27日(木):群馬県立太田高等学校1・2年生30名
半日コース(午後)で、KEKB展示室、BelleⅡ測定器を見学後、「重力波で探る宇宙」の講義、実習で霧箱製作を行いました。生徒たちから「世界レベルで最先端の研究設備を見学することができたので、とても良い体験になりました。重力波の話を聞いて宇宙により興味を持つことができました」、「講義だけでなく、実習や施設見学などの活動が組み込まれていて、KEKでの時間をとても楽しく過ごすことができた。また、自分たちの質問に対しても分かりやすく返答してくれて、とてもありがたく感じた」、「事前に学校で物質と反物質についてや、ビックバンについての説明を受け、KEKがそれについて研究を行っていると聞いて、とても興味を持っていました。特に反物質が宇宙上に存在しないことについては、研究者でもないのに理由が気になって仕方がないです。これからの進路に役立つ研修だったと思います」などの感想が寄せられました。一方、「1つ1つの講義で、時間は丁度良かったのですが、もっと質問する時間があるとすっきりすると思います。身近なもので例えて下さるともっと分かりやすいかと思います」との感想があり、今後の実習受入事業の参考にしていきたいと思います。

11月17日(木):埼玉県立大宮高等学校1年生42名
施設見学前に物理の講義を受け、KEKB展示室、BelleⅡ測定器、PFを見学後、午後は霧箱製作の実習、「ニュートリノ研究で探る宇宙の謎」の講義を受けました。生徒たちから「素粒子の研究が宇宙の誕生、物質の成り立ちを解明すると知り、とても興味を持ちました。昔からダークエネルギー・ダークマターの存在にロマンを感じていましたが、そこにもつながるとは思いませんでした」、「物理の世界では、99.999%まで示さなければならないということに驚いた。CP対称性の破れについての研究に興味を持った」、「薬の研究の人がよく放射光の施設に来ると聞き、私も将来、来る機会があると良いと思いました」、「CP対称性の破れがなかったら、人間はそもそもいなかったんだなと考えると、CP対称性の破れについて知りたいし、知らないといけないなと思いました」、「素粒子と宇宙との関係がここまで深くあるということを知らなかったので、今回の講義を聞いたりして、もともと宇宙に興味があったので、素粒子やニュートリノに興味をもち、これからもっと詳しく調べようと思いました」などの感想が寄せられました。

筑波実験棟でBelleⅡ測定器の説明を受ける生徒たち

重力波の講義を受ける生徒たち

施設見学前に物理の講義を受ける生徒たち

11月29日(火):栃木県立宇都宮高等学校2年生19名
KEKB展示室、BelleⅡ測定器、STF、PFを見学後、午後は霧箱製作の実習、「質量の起源ヒッグスを追う」と題した講義を受けました。生徒たちから「広大な敷地を持つKEKでは、我々の想像を遥かに超えるスケールで研究が行われていた。また、加速器が直接的には少ないが間接的に人類を支えているということを知れた」、「物理や化学についての知識が深まり、有意義な時間を過ごすことができた。人類がまだ解明できていない謎について研究するのは、楽しそうだと思った」、「将来、宇宙開発関連の職業に就きたいと思っており、今まではロケット等の機械に目がいっていましたが、私達の世界を構成する物質について研究をするための加速器の研究をする職業という候補が増えました」、「最後の講義で、研究者に向いている人は必ずしも勉強が好きな人ではないということを教えていただいたことが、とても印象に残りました」、「加速器による素粒子の研究のために加速器の精度や能率を向上させるための研究や、素粒子に関する理論を作り上げる研究、円形加速器のデメリットを利用した物質構造科学研究など多くの研究が利用され、また副産物としてもたらされていることに感動した」などの感想が寄せられました。

1月5日(木):奥州市教育委員会(中学2年生)31名
KEKB展示室、BelleⅡ測定器、富士KEKBトンネル、PFを見学後、午後は霧箱製作の実習、「科学的発見とは?Z項発見の話を例として」の講義を受けました。生徒たちから「KEKBからスーパーKEKBへと次々に研究する機器が変化し、新事実がどんどん明らかになっていくんだということを強く感じました。実際に見て、説明を聞けて良かったです」、「難しいことばかりで、メモを取るのも大変だったから、大学を卒業してから、また見学をする機会があったら、来たいと思った」、「測定器がなぜあんなに大きいのか以前は分からなかったが、色々なことを測定するためだと分かり謎が解けたので良かった」、「測定器の目的など、たくさんのことが分かった。特に放射光を利用した様々な研究の中に、チョコレートの研究があったことに驚いた」、「今はまだ遠い存在だけれど、将来の選択する上で世界に役立つ仕事だと感じたので、興味をさらに持ったら就職してみたいと思う」などの感想が寄せられました。

3月23日(木):香川県大手前中学校3年生12名
KEKB展示室、PF、 BelleⅡ測定器を見学し、午後の実習では霧箱製作を行い、「素粒子物理学とその研究者の一例」の講義を受けました。生徒たちから「素粒子と聞くと、一見難しそうだが、今回の施設見学や講義、実験を通して、素粒子のことを奥深く知ることができたと思う。予習のときは、本や写真でしか見ることのできなかったものを、実際に自分の目で見ることができ、貴重な体験ができたと思う。宇宙線が通った道を観察する霧箱の実験では、自分が見ているものだけが全てではないのだということを身をもって体験することができた」、「今までは素粒子のことを考えたこともなく、知らないことばかりだったので、今回様々なことを教えてもらい、とても世界が広がった。普通、普段あることに疑問をもつことが大切だと思った」、「自分が今まで興味がなかったこと、また、知らなかったことを知ることができ、興味を持つことができました。そして、疑問に思っていたことも解決できました。すごく小さいものを使うのにはすごく労力が必要なんだ!と思いました」などの感想が寄せられました。

筑波実験棟でBelleⅡ測定器見学前の説明を受ける生徒たち

富士KEKBトンネルを見学する生徒たち

製作した霧箱で放射線を観測している生徒たち

夏期の参加団体に関する紹介記事は、2016年10月14日「【高校生等実習受入】夏期に12機関延べ354名の高校生らを受入れました」をご覧ください。KEKでは、毎年、高校生等実習受入事業に参加を希望する高等学校・中学校等を募集しています。応募については、以下のページをご覧ください。
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