【KEKのひと #26】「知識と技術で総合的に役立ちたい」中村惇平(なかむら・じゅんぺい)さん

 
プログラミングや図面の製作など、さまざまな専門技術を持った技術職員が活躍するKEKで、物理系のバックグラウンドを持つ技術職員。「実験結果を見てほかの人が気にならないことでも考えてみるなど、総合的に役に立ちたい」と日々、技術の改良に打ち込むKEK物質構造科学研究所ミュオン科学研究系 准技師の中村惇平さんにインタビューしました。

ミュオン科学研究系准技師 中村惇平さん

―今年度のKEK技術賞※の受賞おめでとうございます。まずは受賞された技術についてお聞きしたいと思います。

「超低速ミュオンを生成するために、レーザーのようなコヒーレント光を分離しながら輸送し、そのエネルギーも測る技術です。これまでは表面ミュオンというものを使っていて、今回の超低速ミュオンは、これまでにない性質の良いミュオンです。J-PARCでは2016年2月に初めて生成されました」

―ミュオンのおもしろいところとは?

「ミュオンは、高校の物理の教科書で出てこないのでなかなか知っている人が少ないです。ただ、地表に降り注ぐ宇宙線のうちの7割ほどを占め、『最も身近な宇宙線』と言われています。ミュオン科学研究系はKEKの中でも大きくはないですが、ミュオンを使って何かを調べる人、ミュオン自体を調べる人、ミュオンを作る人、と様々な関わり方をしている人がいます。仕事上、物構研だけでなく素核研・加速器・共通施設を身近に感じるようになるので、『KEKらしい』組織ではと思います」

―この分野に興味を持ったきっかけは?

「父親が物理学科出身の新聞記者で、家に科学雑誌『Newton(ニュートン)』が創刊号からありました。幼少のころからそれを読んで物理の世界に興味を持ち、慶應大学の物理学科で学びました。そこから京都大学 物理学・宇宙物理学専攻の修士課程を修了し、博士課程に進学。博士1年を終えて退学し、KEKの技術職員になりました」

―博士課程を途中で退学されて技術職員になったのはなぜでしょうか?

「院生時代、このまま勉強して研究の道に進むとだいたいこういうことができるという将来像が見えてしまっていたところ、KEKでの技術の世界におもしろいことができるのではと魅力を感じたのです」

―高校生向けのサイエンスキャンプの講師など、広報室関連のお仕事もされていますが、どのような思いから?

「KEKでは、今の40~50歳代の人が若い頃に大きなプロジェクトが始まり、たくさん人がいますが、20~30歳代は少ないです。20年後を考えると、施設を担う人はいるのかと危機感を持ちました。まずは中高生に興味を持ってもらいたいですね。また、人に教えようとすることで自分の中で中途半端な理解だった部分も分かって、勉強になります」

―趣味は何ですか?

「物理学関連の読書です。ファインマンや寺田寅彦など。それと、子どもが生まれたばかりで、最近は一緒に遊ぶのが楽しいです」

―ありがとうございました。

(聞き手 広報室・牧野佐千子)

※KEK技術賞…広く技術の発展に資することを目的に、特に優れた技術開発及び改善・改良に係わる性能向上等に貢献したKEKに勤務する技術者並びに技術グループを表彰するもの

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