重いハイパー核の構造解明に成功 -中性子星の内部構造を理解する手がかりにー

 
  • 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
  • J-PARC センター
  • 国立大学法人東北大学大学院理学研究科

概要

J-PARCハドロン実験施設で行われた実験で、重いハイパー核であるフッ素19ラムダハイパー核の励起状態を生成し、その脱励起過程をガンマ線分光により精密に測定し、フッ素19ラムダハイパー核の励起準位構造の一部を明らかにしました。ハイパー核に含まれるラムダ粒子と原子核表面の核子( 陽子・中性子 )のスピンの向きの違いによって、ハイパー核の基底状態のエネルギーは 2つに分かれます。そのエネルギー差は、ラムダ粒子と核子の間に働く核力のスピンに依存する部分の強さによります。今回の実験で、このエネルギー差を19ΛFについて精度よく測定しました。この測定結果は、我々が以前に測定した軽いハイパー核(ヘリウム4ラムダハイパー核(4ΛHe)やリチウム7ラムダハイパー核(7ΛLi))の同様のエネルギー差とともに、理論計算の予想値とよく一致していました 。これは、これまでに得られた核力の知識から、軽いハイパー核だけでなく重いハイパー核の 構造も充分に理解しうることを示しています。

中性子星の内部は、強い重力で原子核を圧縮したような物質でできており、そこにはラムダ粒子が存在している可能性が指摘されています。しかし、高密度の原子核中でのラムダ粒子の振舞いがよく分かっていないために、本当にラムダ粒子が中性子星内部に存在しているかどうかは謎のままです。今回のような研究を今後さらに進め、より重いハイパー核の構造を精密に調べて、ラムダ粒子が核内で受ける力が周囲の密度(原子核の大きさや状態によって変わる)によってどう変化するかを詳しく知ることによって、この未解決問題に決着をつけ、中性子星の内部構造を解明するとともに、中性子星がいくらの質量を超えるとブラックホールになってしまうかを理解することができると期待されています。

本研究の成果は、物理学の国際的な専門誌である「Physical Review Letters」の電子版に掲載されました(米国時間の 3月29日付)。

本研究成果のポイント

  • ○重いハイパー核のフッ素19ラムダハイパー核の励起準位構造の一部を明らかにすることに、世界で初めて成功しました。
  • ○その構造は、理論計算による予想とよく一致し、我々のラムダ粒子・核子の間の核力の知識が正しく、それによって重いハイパー核の構造も理解できることが分かりました。
  • ○今後、より重いハイパー核の構造を調べることで、ラムダ粒子が存在する可能性のある中性子星の内部構造を解明することにつながることが期待されます。

    詳しくは、プレスリリース(PDF)をご参照ください。
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