ほとんど水平方向から飛来するミュオン粒子は、100 GeV 程度の大きなエネルギーをもち、火山を透過してその反対側から出てきます。入射するミュオン粒子の一部は、火山を構成している物質との電磁的相互作用により、物質に吸収されます。吸収されるミュオン粒子の数は、物質の密度とそこを通過する長さの積に比例するので、飛来するミュオン粒子がどれだけ火山の中で減少したかを測定することにより、火山の密度分布を知ることができます。

ミュオン粒子の測定は、シンチレーションカウンタと呼ばれる検出器を使います。このシンチレーションカウンタは、ミュオン粒子 (荷電粒子) の通過によって発光するプラスチック板とその発光を捕らえて電気信号に変換する装置から構成されているものです。

実際、筑波山と浅間山を対象として行われた実験では、それぞれ山体の形態と浅間山の噴火道を "見る" ことに成功しています。もし、火山内部のマグマに動きがあれば、火山を構成する物質の密度が部分的に変化します。この場合、火山を透過するミュオン粒子の数も変わるはずです。よって、ミュオン粒子の数を常に監視していれば、火山活動の徴候を事前につかむことも可能になるのです。この観測手段が実用化されれば、あらゆる火山に対してシンチレーションカウンタを設置し、噴火の予知を実現させることも夢ではありません。この方法によって火山活動の予知ができれば、災害予防としての社会的貢献にも期待できそうです。

このように新しい観測手段を確保することは、火山活動に限ったことではなく、広く物理現象のメカニズムを解明する大きな鍵となります。地球物理にはまだまだ解けない謎が多くあります。しかし、その謎に挑戦しようとする科学者は、将来、複雑に絡み合ったこの糸のもつれを明快に解きほぐしてくれることでしょう。 。





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