メンバー

メンバー紹介

高久 諒太

研究員
量子場計測システム国際拠点(QUP)

e-mailtakaku_at_post.kek.jp

宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光観測をベースに、様々なミリ-サブミリ波長をターゲットとする望遠鏡の広帯域光学素子の開発を行ってきました。そのために、JAXA/ISASに籍を置きながら、カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)やフォトンサイエンス研究機構(IPST)、ミネソタ大学との共同研究のため外部機関へ足を運び、これまで未発達状態だった超短パルスレーザーを使った反射防止構造を宇宙望遠鏡へ応用する技術を確立しました。現在はレーザー加工の実観測への導入実績を増やし、普遍的な手法とすべく動いています。また、CMB観測衛星LiteBIRD偏光変調器の開発やその望遠鏡や感度への影響の見積もりなども行っています。

Research Content

現行・次世代CMB観測計画では、その偏光状態を精度良く観測することで、宇宙の始まりを記述するインフレーション仮説を証明しようとしています。高精度の観測を目指すには、望遠鏡の構成部品に挑戦的な要求をもたらします。例えば数千 ~ 数万単位の検出器を用いて高感度を目指し、素子などの熱放射の影響を避けるため望遠鏡を極低温へ冷却して動作させ、天の川銀河のような前景放射と我々がみたい背景放射とを区別するため20 ~ 500 GHz程度の広帯域を観測します。そこから光学素子にも 1 ) 大量の検出器をカバーするほど大きな基板( ~ 500 mm)で、 2 ) 数ケルビン程度の温度でも動作可能で、3 ) 広帯域にて光学素子としての性能を担保せねばなりません。最近光学素子として使われるようになってきたシリコン・アルミナ・サファイアは熱伝導率がいい(冷えやすい)ものの屈折率が高いので反射率が高く、広帯域の反射防止は必須です。一般的な反射防止として使われる多層膜コーティングでは低温下で熱収縮率の違いから剥離する問題があるので、剥離を回避するか、あるいは別の手法を考えるか、解決法が必要でした。

別の手法で注目を集めているのがモスアイ構造です。これは名前の通り蛾の目の表面がナノスケールの微細構造で覆われていることからついた名で、入射領域と光学素子の中間領域を滑らかに補間することができるため境界反射を限りなく減らすことができます。我々はモスアイ構造作製のため、ここ10年単位で急速に発展してきた超短パルスレーザー加工に着目しました。今はサファイアやアルミナの様な硬質な素材に対しても、高精度で、高性能で、かつ数10 cm規模の範囲を現実的な作製時間内でモスアイ構造を加工できるようになっており、世界で初めてこの技術を用いた光学素子を宇宙望遠鏡(MUSTANG-2)へ搭載させました(図)。この技術を他のミリ-サブミリ波長の宇宙望遠鏡へ応用し、より普遍的な技術にさせようと動いています。特に次世代CMB偏光観測衛星LiteBIRDでは観測帯域が非常に広帯域のため、我々の技術が必須です。実績を積みながら、光学素子の宇宙論パラメータへの統計的・系統的影響をQUPメンバーを始めとしたLiteBIRDチームと評価し、実用に向けて研究を進めています。

図: レーザー加工で作製したモスアイ構造付アルミナフィルター
(a)全体像, (b)拡大図 (c)顕微鏡で測定した3D図


透過率測定結果(Ref: R. Takaku et al., OE2021)

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