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Press release
2025.5.16
ダイヤモンド量子センサによる暗黒物質探査法を提唱
―軽い暗黒物質質量の幅広い領域を高感度に探索へ―
QUPの研究グループは、ダイヤモンド中の窒素-空孔中心のスピン状態とダークマターの相互作用を利用した新しい探索方法を提案し、その論文がPhysical Review D誌に掲載されました。窒素原子の核スピンを利用することで、暗黒物質の有力候補であるアクシオンに対し、十分な探索が行われていない、信号周波数にして100 Hz以下、質量にして電子の質量の1018分の1以下の幅広い領域で世界最高の制限がつけられることを示しました。異なる窒素同位体を用いて比較することで、環境磁場などの微弱なノイズと、暗黒物質由来の信号を区別することもでき、今後の精密な観測が期待されます。
本論文では、ダイヤモンド中の電子スピンに加え[1]、核スピンを利用したダイヤモンド量子センサを用いて、軽い暗黒物質質量の幅広い領域を高感度に探索できることを示しました。低温にすることでの高感度化、量子センシング手法開発、高品質ダイヤモンド合成などにより、更なる高感度化が期待できます。QUPでは、高感度化に取り組みつつ幅広い領域について探索を行うために計測システムの構築を進めています。
掲載誌:Physical Review D 111, 075028
タイトル: Nuclear spin metrology with nitrogen vacancy center in diamond for axion dark matter detection
著者: So Chigusa, Masashi Hazumi, Ernst David Herbschleb, Yuichiro Matsuzaki, Norikazu Mizuochi, Kazunori Nakayama
DOI: https://doi.org/10.1103/PhysRevD.111.075028
関連論文
[1] 掲載誌: Journal of High Energy Physics. 2025, 83 (2025).
タイトル: Light Dark Matter Search with Nitrogen-Vacancy Centers in Diamonds
著者: So Chigusa, Masashi Hazumi, Ernst David Herbschleb, Norikazu Mizuochi, Kazunori Nakayama
DOI: https://doi.org/10.1007/JHEP03(2025)083
関連リンク
京都大学からのプレスリリース:
https://www.kuicr.kyoto-u.ac.jp/sites/topics/250516/
高エネルギー加速器研究機構(KEK)からのプレスリリース:
https://www.kek.jp/wp-content/uploads/2025/05/pr202505161000diamond_.pdf
KEK ニュース:
https://www.kek.jp/ja/press/202505161000diamond