6月6日、第4回J-PARC MUSE成果報告会がKEK東海キャンパスにて開催されました。 これはJ-PARCのミュオン科学研究施設(MUSE: MUon Science Establishment)で2012年度に実施された大学共同利用実験について、そこで得られた研究成果を共同利用者が報告しあう研究会です。
開会に際し、施設側よりJ-PARCのハドロン実験施設における事故、およびそれに伴うJ-PARC全体の運転停止により共同利用に支障が出ていることについて、おわびと現況報告がなされました。 次いで、施設報告として建設中の超低速ミュオンビームライン(Uライン)の進捗、運用中の汎用ビームライン(Dライン)では希釈冷凍機など試料環境の整備、 従来より格段に高性能化した新型検出器の導入など、関連する機器の整備や技術開発の現状が報告されました。
成果報告会最初のセッションでは、計画中の高速ミュオンビームライン(Hライン)で提案されているミュオンの異常磁気モーメントを精密に測定する「g-2実験」用の検出器開発、 超低速ミュオンのエネルギーの広がりをさらに改善するミュオニウム発生標的の開発など、ミュオンビームを用いた技術的な開発研究の報告を中心として行われました。
ミュオンを利用した材料科学研究のセッションでは、負ミュオンによる非破壊元素分析の高度化、特に微小試料を想定した実験の結果などが報告されました。 また、正ミュオンが水素のように振る舞うことを利用した研究では、水素吸蔵物質から水素が放出される様子や、リチウムイオン電池中のリチウム拡散の様子など、「動き」の観測から材料設計に迫る、産業界も巻き込んだ研究成果も発表されました。 その他、銅酸化物超伝導体や希土類磁性体などの物性研究、さらにはガス中に負ミュオンを照射してできるミュオン原子の形成起源を探る研究など、報告件数が全21件と過去最大の報告会となりました。