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第8回 サマーチャレンジ開催される

物構研ハイライト
2014年9月 9日

8月19日(火)から27日(水)までの9日間にわたり「第8回 大学生のための素粒子・原子核、物質・生命スクール サマーチャレンジ」が開催されました。サマーチャレンジは、KEK、日本中間子科学会、高エネルギー物理学研究者会議、原子核談話会、PF-UAが主催・共催するサマースクールで、主に大学3年生を対象に、日本の将来の基礎科学を担う若き知の育成を目的として毎年8月にKEKつくばキャンパスで開催するものです。この期間、研究最前線で活躍する研究者による講義やKEKの施設見学が行われます。なかでも、演習は研究者から直接指導を受けながら実験や解析を行い、最後に発表するという研究の一連の流れを体験することができます。今年は全国39大学から約80名の大学生が参加しました。

小林誠 KEK特別栄誉教授の講義

開講にあたり、鈴木厚人KEK機構長より「頭を"ソラ"(空)にして、色々なものを吸収していってほしい」とメッセージが送られました。講義では小林誠KEK特別栄誉教授(2008年ノーベル物理学賞受賞)による「素粒子研究の歩み」と題した素粒子物理学発展の歴史の紹介の他、加速器や物質、生命、宇宙、素粒子、原子核、統計、放射線など多岐にわたり、連日行われました。参加者からは「お金のかからない、小さな加速器はできないのか?」や「ILC(国際リニアコライダー)でできるエネルギーの上限はどのくらい?これから先、リングコライダーは要らなくなるのか?」など、率直な質問が寄せられました。

研究施設見学ではKEKつくばキャンパスのKEKB 加速器、Belle測定器、フォトンファクトリーに加え、東海キャンパスのJ-PARC加速器中央制御室、 物質・生命科学実験施設、ニュートリノ実験施設の見学も実施されました。いずれのキャンパスでも、普段は見ることのできない巨大かつ最先端の実験装置を目の当たりにし、ビッグサイエンスの場を実感した様子でした。見学中、案内する研究者にどんどん質問をするなど参加者の熱心な姿が見られました。

また、サマーチャレンジの目玉である演習は、素粒子・原子核コースでは9つ、物質・生命コースでは5つ実施されました。演習では大学やKEKの研究者が設定、準備したテーマに基づき、 参加学生が自分たちで実験を行います。検出器の組み立てや測定を行い、取得したデータに対して、自ら議論し考えることを重視して進められます。

物質・生命コースでは、12月にも放射光、中性子を利用した実験を行う予定です。夏の間は、加速器の運転を停止しているため、実際の量子ビームを利用することができませんが、12月のビーム実習では、この演習で実験から導かれたデータや仮説を確かめ、更に理解を深めます。

素粒子・原子核コースの演習の様子。液体キセノン検出器の信号波形の大きさをオシロスコープで確認しているところ。
物質・生命コースの演習の様子。プラズマを発生させるレーザーとアルミ板、検出器の位置を調整しているところ。

サマーチャレンジ期間中には、キャリアビルディングというパネル討論も行われました。公的研究機関の他、大学や企業での研究も含め、それぞれの研究生活について知る良い機会となりました。学生からは「研究者になると決めてから、やっておいた方がよいことは?」や「大学院でのつらい経験は?ポスドクって?」といった質問が出ました。留学や、海外の研究機関、大学で研究することに関する質問に対しては、伊藤悦子KEK素核研特任助教が「漠然と海外に行くよりは、誰とこんな研究をしたい、と目的を持つこと。そういう風に思った時が行く良い時機です。」とアドバイスしました。また研究だけでなく、結婚や育児に関する質問も多く見られました。パネル討論後にも、木村正雄KEK物構研教授を囲み、人生相談に花を咲かせていました。

キャリアビルディングの様子。

この様な場だけでなく、演習に参加しているティーチングアシスタントの学生に対しても、年齢の近い先輩として、進路や研究活動について質問する姿も目立ちました。ティーチングアシスタントの学生には、サマーチャレンジ卒業生も多く見られます。彼らはほとんど終日時間を共有し、難しい課題に協力して挑むことで、サマーチャレンジ特有の強い絆が生まれます。

発表会の様子
ポスター発表の様子

最終日には、演習グループごとに実験と成果をまとめた発表会を行いました。単に実験をこなすだけでなく、ポイントを整理し、資料を作り、人に説明すること、聞くことも重要な経験となります。時間内に終わらなかった質問や議論はポスター発表へと続き、学会発表さながらの様相でした。

修了式では鈴木機構長の直筆サインの入った修了証書が岡田安弘 KEK理事より手渡されました。そして岡田理事からは、「このサマーチャレンジで経験したような「面白かったなぁ」と感じることを一生続けるのも研究。実際の研究では躓くこともたくさんある。けれど解決すると、もっと、ずっと面白い。ここで出会った人たちは、とても大切なものを共有できたと思います。それを大切に。」との言葉が送られ、幕を閉じました。

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