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KEK

コンパクトERL エネルギー回収運転に成功

物構研トピックス
2014年3月12日

次世代の放射光源加速器として期待されているERL(エネルギー回収型ライナック)の技術検証のために建設されたコンパクトERLで、エネルギー回収運転に成功しました。
コンパクトERLは、KEKが日本原子力研究開発機構、東京大学物性研究所、分子科学研究所(UVSOR)、広島大学、名古屋大学等と共同研究、技術開発を行っている加速器です。2012年より建設開始し、2013年5月末には入射部にて電子ビームの加速に成功しました 。その後、7月から周回部の加速器建設を行い、11月末に周回部の建設を完了し、原子力規制庁の指定登録機関である原子力安全技術センターの施設検査に向けて立ち上げ調整を行なってきました。そして3月7日にエネルギー回収運転の施設検査を受け、3月12日付で合格しました。

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図1 コンパクトERL全景と電子ビーム軌道

まず高輝度電子銃から390 kVの電圧で加速された電子ビームを高輝度電子銃から引き出し、入射部超伝導空洞で2.9 MeV*(図1 青色で表示)まで加速します。 その電子ビームを主加速部超伝導空洞(以下、主空洞)へ導き、約20 MeVに加速します。その後、20 MeVに加速された電子ビームは周回部を回り、再び主空洞に戻ってきます。 電子ビームは、最初の2.9 MeVの電子ビームとほぼ同じ軌道上に戻りますが、2.9 MeVの電子ビームと逆位相になるように周回部の軌道長を調整します。 逆位相のまま主空洞に導かれると電子ビームは「加速」ではなく 「減速」されます。この減速によって回収されたエネルギーは、主空洞内の電磁場に蓄えられ、次の2.9 MeV電子ビームの加速に利用されます。 最後に、エネルギーを回収されたビームは、ビームダンプに導入され、安全に止められます。

今回の運転では、この一連の運転が行われました。そしてERL技術の肝となる、周回してきた電子ビームを入射部から電子ビームとちょうど逆位相になるように主空洞に導くことが確かめられ、 エネルギー回収運転ができるようになりました。図2は、電子銃直後とビームダンプでビーム電流を測定した例で、ほぼ同じビーム電流が観測されました。 図3は、ビームダンプの手前に設置されたスクリーンモニターを用いて観測された、ビームの画像です。ビームの最大出力は、連続出力で約4.5 μAまでのビーム電流をエネルギー20 MeVで周回させ、減速してビームダンプまで導くことに成功しています。

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図2 電子銃からビームダンプまでビームをほぼ損失なく輸送できた事を示す図。 電子銃直後(図2左、黄色トレース)とビームダンプ(図2右, 赤トレース)で測定されたビーム電流波形を示す。小電流のパルスビーム(パルス幅1 μs、ピーク電流約40 μA、繰り返し5 Hz)を用いて測定した。
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図3 ビームダンプの手前に設置されたスクリーンモニターで観測したビームの像。小電流のパルスビームを用いて観測した。緑色の枠の間隔は、縦50 mm×横50 mm。

現在は、申請値(35 MeV、10 μA)の約20%の強度で運転していますが、今後、加速器機器の調整を進め、目標となるビーム性能の実現、ビーム電流の増強等について、 これまでの蓄積リング型放射光を凌駕する高輝度性、短パルス性をもつ放射光を生み出す次世代放射光源の試験加速器として性能向上を進める予定です。 またコンパクトERLの電流増強とともに、大強度のレーザー逆コンプトン散乱X線源の開発と、短パルス性を利用した大強度コヒーレント テラヘルツ ビームラインの整備を順次進めていく予定です。

* ビームエネルギーは、静止エネルギーを含めた全エネルギーで表示しています。

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