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半導体接合面バンドオフセットの任意制御に成功

物構研トピックス
2015年4月10日

スタンフォード大学の矢嶋 赳彬(たけあき)博士(現・東京大学大学院工学系研究科 助教)、疋田 育之 博士、簔原 誠人 博士(現・KEK物構研 特別助教)、Harold Hwang 教授とKEK物構研の組頭広志 教授らの研究グループは、ペロブスカイト酸化物を用いて半導体接合面のバンドオフセットを制御することに成功、その特性をフォトンファクトリーを利用して確認しました。

fig1.png図1 ペロブスカイト構造

ペロブスカイト酸化物とは、酸素を頂点とした正八面体の中心に金属原子が配置する構造(図1)をした酸化物の総称で、金属原子の種類や組み合わせ、格子が歪んだりすることで多彩な機能を発現する物質です。この物性を電子デバイスへ応用する研究が国内外で盛んに進められています。例えば2種類の半導体を接合したトランジスタの場合、物質間の電子のエネルギー準位の差(バンドオフセット)によって、その特性が決まります。このバンドオフセットは、界面を構成する原子の電子準位によって決まるため、適切な電子準位を持つ物質を選択することが、これまでの電子デバイス設計の基礎でした。

fig2-mod.png

図2 (a)、(b)作製した試料構造と期待されるバンド
ダイアグラム

研究グループは、金属酸化物SrRuO3とn型半導体NbドープSrTiO3の接合界面に着目し、両者の間に生じるバンドオフセットを任意に制御することに取り組みました。界面に正または負のイオン電荷を挿入すると、金属側にその反対の電荷(遮蔽電荷)が現れます。この遮蔽電荷と挿入したイオン電荷とが界面電気二重層(界面ダイポール層)を形成することで、界面のバンドオフセットが変調すると考えられます(図2)。

そこで、半導体-金属接合面の一層を正または負の電荷を持つ層に置き換え、特性を評価したところ設計通りにバンドオフセットが変調していることが分かりました。さらに光電子分光測定で詳細に調べたところ、その変調幅は1.7 eVにも及ぶことがわかりました(図3)。この値は、半導体層として用いたNb:SrTiO3のバンドギャップの半分以上の大きさにも及び、これまでにシリコンや有機物を用いた例で報告されてきた界面ダイポールの値よりもはるかに大きな値を示しました。この手法は界面をわずか一層変化させるという点で、他の物質にも容易に応用でき、広い波及効果が期待されます。

fig3.png

図3 (a)電流-電圧(I-V)特性評価結果。極性層の挿入により整流特性が大きく変化している様子がわかる。
(b)光電子分光測定結果。極性層を挿入することで内殻準位スペクトルのシフトが観測される。
(c)様々な評価手法で得られたショットキー障壁高さ。正または負の極性層の挿入により、最大で1.7 eVもの障壁高さ変調が達成されていることがわかる。

この成果は、アメリカ科学雑誌「Nature Communications」に4月7日(現地時間)オンライン掲載されました。

論文情報
Title: “Controlling band alignments by artificial interface dipoles at perovskite heterointerfaces” [DOI: 10.1038/ncomms7759]
Authors: Takeaki Yajima, Yasuyuki Hikita, Makoto Minohara, Christopher Bell, Julia. A. Mundy, Lena Fitting Kourkoutis, David A. Muller, Hiroshi Kumigashira, Masaharu Oshima & Harold Y. Hwang


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