クライオジェニックスグループの職務内容

 クライオジェニックスグループは、つくばキャンパスと東海キャンパスの両キャンパスで仕事を行っています。素粒子原子核物理学の分野で必要とされる超伝導電磁石とその冷却システム、キセノンやアルゴンなどの液化ガスを媒体とする検出器や標的、高感度ミリ波検出素子を数ミリケルビンの温度まで冷やす超低温冷却などの超伝導・低温工学に関する装置の研究開発・建設・運転を行い、両キャンパスにおいて様々な実験プロジェクトを横断的に支えています。

人員:教員4名、技術職員5名 

http://ipnscryo.kek.jp/index-j.html

Belleヘリウム冷凍システム       

技術職員に必要な技術


下記の3つの技術を一通りマスターしてもらい、更に高度な技術を自ら開拓し、グループやコミュニティに還元していくことを期待します。

低温工学・機械工学に関する知識

 超伝導体からできた線(超伝導線)は、ある温度以下に冷却すると電気抵抗がゼロになる超伝導現象を生じます。この線をコイルにして電流を流すと非常に強力な電磁石になるので、強くて大きな磁場空間を物理実験に提供する事ができます。超伝導電磁石は、液体ヘリウムや液体窒素などの寒剤を使用して約4ケルビン(-269℃)に冷却し、その状態を保持する必要がありますが、そのための低温生成・低温維持のための技術(寒剤の取扱い、熱力学、断熱技術、低温容器の設計、冷凍配管の設計、計測制御など)が低温技術者の腕の見せ所になりますので、実践を通して学んでいきます。CAD製図や有限要素法解析ソフト(磁場解析、構造解析など)なども必須のスキルになります。



ニュートリノ超伝導ビームライン



液体アルゴン粒子検出器


計測制御技術

 装置からの信号を取込み、制御して低温を維持するために「計装」というプラントの計測・制御の技術が必要となります。装置のセンサーからの温度・圧力等の各種物理量を取込み、冷凍設備のバルブやヒーターで冷媒ガスを調節し、極低温状態を作ります。一般的な計測制御技術の延長線上にありますが、取扱う信号は特殊なものが多く、加速器近傍に設備が置かれているため、機器の実装に特別な配慮を必要とする場合があります。
 現在装置はほとんどデジタル化されていますが、各種物理量を計測するセンサーや流量・圧力を制御するバルブなどのデータや操作量はアナログです。このためアナログ電気回路の知識は必須です。


ニュートリノヘリウム冷凍システム



Belleヘリウム冷凍システム制御室


業務を遂行するに必要な資格

 超伝導電磁石の冷却設備や液化ガス検出器の中には、「高圧ガス保安法」という国が定めた法律の適用を受ける装置もあります。装置を建設する時、監督官庁に許可申請を行い、この法律の基準に適合するように装置を作らなければなりません。また、装置を動かく時も、「高圧ガス製造保安責任者」という国家資格の免状を取得した人が、定められた基準に従い運転を行います。許可申請を行なったり、装置を安全に運転するためにも、保安責任者免状を取得する必要があります。その他にも実験装置を移動・運搬するための天井クレーンやフォークリフト運転士の資格も取得してもらいます。CADやANSYS、LabVIEWなどのソフトをマスターするための講習会やセミナーにも参加することもできます。

 



装置の法定点検


先輩職員の声@

 学部卒でH27年に採用されて3年目の技術職員です。
 今は、東海キャンパスで超電導電磁石を冷やす大型ヘリウム冷凍機の運転、保守などを担当していて、自分がすっぽり入ってしまいそうな巨大な配管や自分の身長の2倍ほどもある巨大電磁石などに囲まれながら仕事をしています。
 低温という分野に大学時代はまったく関わりが無かったので知識ゼロからのスタートでしたが、現場で手を動かし、体を動かし、装置の運転を2回、3回と積み重ねていくうちに、自然と知識がついていきました。
 疑問を持ったときにすぐに調べられる、調べてわからなかったら先輩や上司に聞けるという環境が整っているKEKは、仕事をしながら専門性を学んでいける非常に良い職場だと私は思います。
 素粒子実験は「いかにデータ量を取れるか」というところも重要で、これはつまりビームが出ている時間中に装置をいかに止めないか、というところにも依存してきます。 装置を安定に不具合なく運用すること、不具合が出たときにその不具合の原因を正しく分析し、不具合を修正することは、技術職員の大事な仕事の一つであり、私はこのような裏方から技術で支える仕事にもやりがいを感じています。 また、低温・超電導の世界はKEKで行っている実験の中でも目に見えて解りやすい ものの一つでもあります。例えば、液体窒素が常温でブクブクと沸騰してひんやりした煙がモクモクと上がっているのを見るだけでも、「とても冷たいもの」というイメージは湧きやすいと思います。
 このようなイメージの湧きやすい低温・超電導は一般公開などで出展するブースでも子どもにも大人にも人気で、特に超電導コースター(超電導の性質を利用したジェットコースターのおもちゃ)などは出展すると長蛇の列ができるほどで、「なるほど」「おもしろい」という声を一般公開などで聞けることも、やりがいの一つです。
 先日は、低温の世界を知ってもらう市民公開講座の一環としてキッザニア東京での低温関係の実験体験のお手伝いもさせてもらいました。このように、内外に広く活動の場を持てることも、KEKで技術職員として働く魅力だと思います。 みなさんも技術職員として働いてみませんか。

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