高エネルギー加速器研究機構放Photon Factoryに於いては、シンクロトロン放射光を実験装置まで導くビームラインが設置されており、各ビームラインでは放射線安全等に関するビームラインインターロックシステム(以下BLIS)が動作している。 これまで、BLIS操作用のインターフェースとしてはタッチパネルが使用されていたが、今回新たにSTARS(Simple Transmission and Retrieval System、http://stars.kek.jp)とPCをベースとしたインターフェースを持つ新しいBLISのプロトタイプを開発した。 また、今回の開発に際し、配線表作成をはじめとした導入時プロセスの大部分に関して自動化を行ったことで、導入効率を大幅に向上させることに成功した。 本研究会ではこの新しいBLISの概要と導入作業の効率化について報告する。

2002年ノーベル化学賞を受賞された田中耕一さんのマトリックス支援レーザー脱離イオン化法（MALDI）により、今日われわれはある試料がどのような異なったタンパク質から構成されているかを簡単に知ることが可能になりました。MALDI は現代の質量分析技術の柱ですが、現在主流の走査型装置では空間分解能（>10um）と計測時間（>10時間）において原理的な限界が知られています。そこで、現在 KEK と阪大の共同研究チームは次世代のイメージング質量分析技術の開発に取り組んでおり、私はその中核となるイオン検出器の設計を担当しています。本検出器はフルカスタムアナログ集積回路ですが、越えなくてはならないいくつものハードルがあります。開発の現状について報告します。

国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡では、ファーストライトを迎えて、すでに16年が経過した。現在、すばる望遠鏡は摩耗劣化の故障期間に入り、コストが削減されるなか長期に渡り望遠鏡を健全かつ安全に運用することが期待されている。これまで望遠鏡の異常を検知する方法は、山頂施設のモニタ画面や山頂作業での報告が中心であった。我々は、こうした背景の中、的確な状態監視と予防保全に取り組み、またテレメトリデータを用いた戦略的な保全計画強化を進めている。本発表では、すばる望遠鏡のテレメトリデータを活用した異常検知手法や保守への利用について述べる。

現在、J-PARCでは将来計画であるビームパワー増強のために、主リングの運転周期を2.5秒から約1秒へと早める高繰り返し化の実現が求められており、その計画の一部として主電磁石用新電源の開発が進められている。新電源開発過程において製作されたプロトタイプ電源制御盤では、A/D変換部用恒温ユニットを除いた全てがKEK製となっているが、恒温ユニットに関しては現行電源予備品を使用している状態であり、今後、KEK製の電源制御装置を新電源に用いる際、現行電源予備品ではコスト面、調達性での不都合が懸念される。そこで懸念の解消、電源制御装置の全てをKEK製とすることを目的として、恒温ユニットの開発を行った。本発表では、恒温ユニットの設計・製作および、性能評価試験結果を報告する。

SuperKEKBやILC計画に使用される大型実験装置で電子や陽子などの粒子を加速する超伝導加速空洞は、組立の際空洞内部に汚染物質が入ると加速性能が低下する。そこで汚染物質の侵入経路を見つけるため、室温からの侵入熱量を小さくし過冷却ヘリウム(2ケルビン）にするため減圧により戻る約2ケルビンのヘリウムガスの顕熱を熱交換器により回収して液体ヘリウムの消費を抑えた超伝導加速空洞用横型クライオスタットを製作したので報告する。

SuperKEKB加速器のビーム衝突点における素粒子反応をとらえるための測定装置BelleⅡ測定器の中央部に設置し、素粒子の通過位置を測定するための検出器SVD（シリコン・バーテックス・検出器）の製作に参加している。SVD開発では、治具の設計、製作、調整、組み立てに必要な接着条件の開発等、多岐にわたる技術開発が必要であるが、治具の開発に付随し、開発現場では様々な小技を駆使している。当報告ではSVD開発の概要ではなく、現場で工夫を加えた汎用性のある技術の報告を行う。

高エネルギー加速器研究機構ではCERN（欧州原子核研究機構）のCMS、ATLAS検出器の衝突ルミノシティ向上のための、アップグレード用マグネットの開発を行っている。衝突点にある左右の加速器用超伝導電磁石（ビーム分離用ダイポール）計4台を担当する予定である。1つの衝突点の片側に、常電導マグネット6台、約22mで現在稼働している所を、超電導マグネット、全長約7mに置き換える。長さは1/3となるが定格磁場は4倍になる。

KEKの共通基盤研究施設に所属する機械工学センターでは、機構が推進する各プロジェクト等からの要請を受け、「製造支援」と「エンジニアリング支援」の業務を行っている。 「製造支援」は、機構職員からの依頼により各種部品の製作・加工・測定・組立等を機械工学の専門的な立場から支援する。また、「エンジニアリング支援」は、機構の各プロジェクト等に派遣し、中長期的に装置の設計・解析・試作・部品製作・実験等を機械工学の専門的な立場から支援する。 「製造支援」では、各種工作機械や設備を使用し、常勤5名・シニアフェロー2名の計7名の技術職員が、主に支援業務を遂行している。また、「エンジニアリング支援」には、常勤4名・シニアフェロー2名の計6名の技術職員を配置し、機械工学の分野を担当している。 本報告では、年間450件前後の依頼業務を受けている「製造支援」の中から数例を挙げて「製造支援」の内容について紹介する。

OIST（沖縄科学技術大学院大学）の紹介とメカニカルエンジニアリング＆マイクロファブリケーションサポートセクションの概要を報告する。主に、所属部署のメカニカルエンジニアリングの工作室では各種実験機器を必要とする研究者のサポートを中心に活動しています。溶接を含む加工技術の習得を行ったKEK機械工作センターでの研修内容も含めて、その仕事内容と今までの加工事例について発表を行う。

本学のヘリウム液化システム（L140）は2015年7月の液化中，電力会社に原因がある数十秒の停電事故により異常停止に至った。停電事故は無人運転中の夜間に起きたがシステムは安全に停止状態に遷移した。本学の液化システムは監視用PCに関してはUPSを設置しており，今回の停電でもシステムの監視は継続されていたが液化機本体の計装制御は停電で一時的に無制御状態にあったため，各種状態データの取得や制御は不可能な状態にあった。またその後の再稼働時には液化機本体の自動バルブに不具合が生じ，液化業務の継続のため手動バルブ操作による応急運転を行った。本事例報告ではその際の状況と対応，今後の液化システム本体の停電対策構想について報告する。

千葉大学理学部極低温室では低温寒剤である液体ヘリウムを学内へ供給するためヘリウム液化装置を運用しております。液化装置の運転頻度は概ね週１回程度です。連日運転するわけではないため液化機内部は次回運転時には外気温近くまで暖まってしまいます。このため装置起動から液化開始までの予備冷却過程に時間を要してしまいます。装置停止時の温度上昇が抑えられれば次回運転時の予備冷却時間は短縮され節電および拘束時間の短縮化につながります。今回は温度上昇を抑制すべく断熱真空層（コールドボックス）の真空度維持を目的としてターボ分子ポンプを設置して改善を試みました。真空度が維持されることで温度上昇がどれほど抑制されたのか、それによって予備冷却時間がどれほど短縮されたのかについて報告いたします。

真空中でゲッター材を加熱して反応性の高い表面を作製し、残留ガスを吸着させて排気する真空ポンプを非蒸発ゲッター（NEG）ポンプと呼ぶ。NEGポンプは、油をまったく使用しない、エネル ギー消費が少ない、10-10 Pa台まで排気できる、振動・騒音を生じない、小型軽量である、ゲッター材の蒸発・スパッターを伴わないなどの利点から、極高真空～高真空領域のポンプとして広く使われている。我々はICF70マウントNEGピル縦積層型ポンプを開発し、排気速度120L/sを実現した。本ポンプは同程度の排気速度を持つ市販の外国製NEGポンプの半額以下で製造できるため、放射光施設の建設コストを大幅に削減できる。

核融合科学研究所では大型ヘリカル装置を真空排気するために様々なポンプを使用している。その中でも粗引き排気で使用するオイルフリー型スクロールポンプは30台を超えており、毎年所員による一定数の自主的なメンテナンスを行っている。メンテナンスではポンプ本体を分解し、機構の状態確認や拭き取り清掃、さらにシール材の交換も行っている。これまでのメンテナンス経験から運転の仕方によって内部の汚れ具合が変化する事象が確認された。ポンプ内の汚れを減少させることは、メンテナンスを省力化する上で重要である。本発表ではその事象と原因調査内容について報告する。

ITERプラズマ加熱・電流駆動用中性粒子入射装置（NB）の実現に向けて、ITER実機と同一仕様であるエネルギー1 MeV、電流60アンペアの試験施設（NBTF）をイタリア・パドバに建設中である。原子力機構はこのNBTFの機器のうち１MV超高電圧機器の製作を行っている。この中性粒子の元となる負イオンを生成する負イオン源では電極を180℃の高温に維持するため、高温純水を１MVの高電位に供給する必要がある。純水の抵抗は温度上昇とともに低下するが、100℃以上の高温領域での抵抗値は不明であり、設計する上ではとても重要な値である。そこで100℃～180℃までの抵抗率を測定した結果、180℃での抵抗値は0.36MΩ･cmであることが分かり、純水供給系の設計を完了できた。

J-PARC物質生命科学実験施設では加速器によって加速された大強度陽子を標的に衝突させ、発生したミュオンや中性子を利用した実験が行われている。ミュオンや中性子を発生させる標的は高度に放射化するため放射化機器取扱室において遠隔操作にて交換、保守が行われる。放射化機器取扱室には汎用の天井クレーン、三軸駆動装置、切断装置、マスタースレーブ、パワーマニュピレーターなどが配備されており、交換対象機器に適合したアタッチメントを製作して作業を行う。本発表においてはミュオン標的関連機器の遠隔操作による交換・保守作業のために設計・製作したアタッチメントおよび関連機器、2008年より現在まで実施された交換コミッショニングに関して報告を行う。

PF BL-17Aでは、X線ビームのさらなる微小集光化を目指し、平成26年夏から平成27年春にかけて光学系レイアウトの変更、集光装置の追加などといった高度化作業が行われた。微小集光化されたビームを試料位置に安定して照射するためには、途中のビームライン光学系への振動の伝達を極力抑える必要がある。これまでBL-17Aでは梁から離れた場所にある光学装置付近に人が近づくと体重により床が沈み、ビーム位置や強度の変化が観測され、実験に影響が出ていた。このため高度化作業の一環として、脆弱性が指摘された床の補強工事を行った。この結果、ビーム変動が改善されたことがわかった。本発表では床補強工事の様子と、工事の成果を評価するために行った振動測定について述べる。

ニュートリノ振動実験では、標的で発生したパイ中間子を収束させるため、電磁ホーンという装置を用いる。電磁ホーンに、アルミ合金製板状導体（バスバー）を用いて瞬間的に320kAの大電流を付加することにより、トロイダル磁場を発生させる。バスバーには、ジュール熱の他に、パイ中間子の通過による発熱が生じる。バスバーをダクトで覆い、ヘリウムガスを流すことで冷却する。現行の冷却方式では、1MW程度のビームパワーまでしか対応できず、より高いビームパワーを目指すには、抜本的な冷却方法の見直しが必要である。そのため、バスバー内部に摩擦撹拌接合(FSW)を用いて流路を形成し水冷することで冷却能力の向上を目指す。テストピースを用いて冷却能力の評価を行った。本講演では、その冷却試験結果の報告を行う。

高エネルギー加速器研究機構は大学共同利用機関法人であるため実験・打ち合わせ・ワークショップ等で一時的に来訪される方が多く、その来訪される方からインターネットアクセス環境を求められることが多くなってきていた。しかしながら機構内ネットワークに接続する方式だと、本人確認に時間がかかるあるいはセキュリティ的に混在するのは好ましくない等の問題があったため、一時来訪者向けのネットワークを新設することにした。実装やその際に発生した問題等について報告する。

昨今、従来のアンチウィルスやFirewallでは対応が難しい、標的型攻撃などの新しいサイバー攻撃手法が急激に増加しており、岡崎3機関では対策システムとしてFireEye（NXシリーズ：サンドボックス検査型）を昨年度末頃に導入した。 FireEye導入を検討するにあたって、他の2社の同じサンドボックス検査型の標的型攻撃対策システムと約1ヶ月間比較評価した際の結果と注目した点、FireEyeを既存所内ネットワークに組み込む際に考慮したこと、FireEyeを運用してから見えてきた傾向とそれに対する対応や新たな出てきた問題などについて報告する。

本学科では、サーバ４０台、端末１３０台、ネットワークシステムの運用を行っている。このたび計算機システムの更新を行ったので、それについて報告する。また、更新に際し、管理の効率化と障害発生時の迅速な対応を行うため、サーバ監視を導入したので、あわせて報告する。