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フランスがBelleⅡに正式参加 TYLを通じた地道な交流が結実

フランスが正式にKEKのBelleⅡ実験への参加を決め、仏駐日大使によって筑波実験棟に国旗が掲げられたことは、長年交流の努力を続けてきた関係者にとって大変意義深いことで、実験の成功にも大きな助けなると受け止められています。

フランスはCERN(欧州原子核研究機構)の主要参加国であり、その中核となる原子核素粒子物理研究所(CNRS/IN2P3)は、素粒子原子核物理、加速器・測定器技術研究の分野でKEKと長期にわたる親密な協力関係にあります。しかし、B中間子の崩壊モードからCP対称性の破れを精密に測定し、小林誠・益川敏英両博士にノーベル物理学賞をもたらしたBファクトリー研究においては、フランスはBelle実験のライバルであるSLACのBaBar実験に参加。その後Babar実験が打ち切られ、同じくBaber実験の参加国であるドイツ、イタリアなどがBelleⅡ実験への参加を表明した後も、フランスは国としてどう対応するかを検討し続けてきました。

しかし、BelleⅡ実験のような世界的な規模の素粒子物理実験には、CERNの主要メンバーであるフランスの協力も欠かせないことから、日仏間の共同研究事業であるTYL日仏素粒子物理学研究所(Toshiko Yuasa Laboratory‐France-Japan Particle Physics Laboratory)のチャンネルなどを通じ、正式な参加を呼びかけてきました。

TYLは2006年5月、KEKとIN2P3、フランス宇宙基礎科学研究所(CEA/Irfu)との3者間で締結された新しいタイプの仮想連携研究所です。フランスのCNRSで多彩な原子核研究を行っていた日本人女性研究者、湯浅年子博士(1909-1980年)にちなんで名付けられ、加速器・測定器、ニュートリノなどに関する研究の人材交流や、女子高校生のためのサイエンススクール “理系女子キャンプ” の開催、お茶の水女子大学の湯浅年子賞への協力などに取り組んできました。

今年4月にKEKで開催された「第6回TYLスクール理系女子キャンプ」には全国から30人の女子高校生が参加。フランスの女性研究者で、ソレイユ研究所のMarie Emmanuelle COUPRIE博士らを講師に招き、科学実験や講義、加速器体感ツアーなどを行うなど、研究者のネットワークを通じた草の根の活動を続けてきました。

日本側のTYL共同代表の幅淳二・素核研副所長は、「我々にとってフランスの参加は大変大きなことで、これでヨーロッパの主要な国がほぼ揃ったことになります。長年の努力が実って大変うれしいです」とコメント。フランス側のTYL共同代表で、オルセー・線形加速器研究所(LAL)のPhilip BAMBADE博士も、「とても喜び、そして誇りに思います。TYLの活動は、日本とフランスの研究者の直接的な交流を作り出そうと、11年前に始めました。資金が少ないながらも活動を継続する中で、フランスがより積極的な形でBelleⅡに参加できるよう一緒に知恵を絞ってきました。今日の結果に無視できない影響を与えたと言えるでしょう」と話しました。

BelleⅡ実験には、フランスからLALとストラスブール・Hubert Curien 学際研究所(IPHC)から研究者12人が参加し、B中間子が崩壊してできる粒子を識別する装置やルミノシティ(電子と陽電子の衝突頻度)を計測する装置の設置・調整・運転、さらに飛び散った素粒子の飛跡を解析するためのソフトウェア開発および物理解析などで貢献する予定です。

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