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ミュオンをつくるため、黒鉛円板は回り続ける ~日本とスイスの国際協力による挑戦~

高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所では、大強度陽子加速器施設(J-PARC)において加速した陽子ビームを黒鉛製のミュオン標的に照射することによって世界最高の質と強度を誇るミュオンビームを生成し、それを用いた物質生命科学や基礎物理の研究を進めています。先行して標的開発を進めていたスイスのポールシェラー研究所(Paul Scherrer Institute、以下:PSI)からの技術協力で大強度の陽子ビームにも耐える回転標的方式の開発が進められました。一方、PSIでは回転標的の回転体を支える軸受が1年以内に破損してしまうため、実験を停止して標的を交換しなければならないことが問題となっていました。そこで、物質構造科学研究所を中心としたグループでは、より長い寿命を達成できる軸受の調査研究を行い、それをJ-PARC製の回転標的に採用することによって2014年~2019年の長期に渡る運転を実現しました。この結果を受け、PSIでも同じ軸受を採用したところ、2021年12月に安定な連続運転期間がPSIでは過去最長となる1年に達しました。世界の2大ミュオン施設であるJ-PARCとPSIはサイエンスの良きライバルであると同時に、相互協力により技術の向上に努めています。本技術は大強度化を目指す世界の加速器において、標的などを含む様々な回転体に応用可能です。

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プレスリリース本文

論文情報

雑誌名
日本加速器学会誌
タイトル
J-PARC MLF ミュオン生成標的
著者
牧村俊助、河村成肇、的場史朗
DOI
10.50868/pasj.18.4_202

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