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第17回サマーチャレンジ開催しました

2023年8月18日から26日にかけて、第17回サマーチャレンジが開催され、全国から60名が参加しました。サマーチャレンジとは、基礎科学を担う若手を育てることを目的とし、科学を志す仲間との出会いや今後の進路を考えるきっかけとなる科学技術体験型スクールです。大学3年生を主な対象として、KEKが主催、高エネルギー物理学研究者会議と原子核談話会が共催で実施しています。主なプログラムは最前線で活躍する研究者による講義と素粒子・原子核の本格的な演習です。この他に、KEKつくばキャンパスと東海キャンパス(J-PARC)の施設見学ツアーなども実施しています。

初日は、2015年にノーベル物理学賞を受賞された梶田 隆章氏(東京大学宇宙線研究所)による特別講義から始まりました。梶田教授のノーベル賞受賞理由になったニュートリノ振動の発見について、カミオカンデ建設の頃までさかのぼり、現場での裏話も含めて楽しくお話いただきました。参加者から、研究者として必要な資質について質問され、ご自身の体験として大変な時期でもワクワク感を持って日々研究をしていた 、と答えられていたのが印象的でした。

2日目は、毎年恒例のキャリアビルディングを行いました。キャリアビルディングはさまざまな分野で活躍中の研究者や社会人をパネラーに迎え、パネラーとの対話から進路を考えるきっかけ作りを目的としたプログラムです。パネラー陣によるキャリア形成をテーマとしたパネルディスカッションの後、パネラーを中心とした座談会形式に移り、研究者に進むまでの道のりや研究テーマを選んだきっかけなどを徹底的に語っていただきました。博士課程進学やキャリアの多様性など、将来の参考となるパネラーの話に参加者は真剣に聞き入っていました。

サマーチャレンジのプログラムは講義と演習のほかに、つくばと東海の施設見学ツアーが組み込まれています。
午前は第一線で活躍する講師陣による「素粒子」「原子核」「加速器」「宇宙」「放射線」「統計」の講義が行われ、講師の説明を一言 も聞き逃すまいとする意気込みが感じられました。

各演習はテーマの選定、準備から演習中の指導まで、KEK以外にも東北大学、筑波大学、お茶の水女子大学、東京工業大学、東京都立大学、国際基督教大学、金沢大学、岐阜大学、名古屋大学、大阪大学、神戸大学、九州大学など多くの大学のスタッフやTAによる協力で成り立っています。今年度の演習課題です。

演習 1 班   量子の波動性と粒子性〜1光子を発生させて干渉を見る

演習 2 班   ワイヤー1本で素粒子をとらえる ~素粒子・原子核実験の心臓部分「ワイヤーチェンバー」を作ろう~

演習 3 班   先進加速器を体験しよう ~実験と電磁波シミュレーターで体験する先進加速器~

演習 4 班   磁気スペクトログラフ ~ 磁場の中での荷電粒子の振る舞い ~

演習 5 班   原子核からのガンマ線を計測して核スピンを調べよう

演習 6 班   霧箱で素粒子を測る

演習 7 班   宇宙線観察で学ぶ粒子の崩壊とスピン回転

演習 8 班   放射線検出器を作ろう~IoT 技術と物理実験~

演習 9 班   自然放射線を理解しよう~GM カウンターの製作から線量測定まで~

演習 10 班   宇宙線ミューオンを捕まえて素粒子の対称性を調べよう

8月21日と23日に、つくば見学ツアーおよび東海見学ツアーを行いました。

最終日は、各演習班による発表会が行われました。仲間同士協力し合い、時には白熱した議論をしながら発表に向けて準備してきました。自分たちで作った検出器などの装置を使った実験の結果と考察をまとめ、綿密に準備した様子が感じ取れました。どの班の発表に対しても、他班の参加者からたくさん 質問が寄せられ、中には鋭い質問もあり、ポスターセッションに議論を持ち越す場面もありました。

 

今年の修了式にはKEK山内正則(やまうち まさのり)機構長が登場し、直接参加者に修了書を手渡しました。最後に、山内機構長は参加者に向けて「若い人が来てくれるサマーチャレンジを毎年心待ちにしていました。ポスターセッションでは活発に議論している様子がうかがえ、大変心強く感じました。このサマーチャレンジを通じて研究が楽しいと感じてくれたら嬉しいです。ぜひ皆さんには研究者になっていただきたい。基礎科学はすぐに経済効果につながるものではありませんが、人類の潜在的な価値を積み重ねており、100年後の未来につながっています」と伝えました。

第17回の校長を務めた長谷川雅也(はせがわ まさや)准教授は、「多くの方々のご協力を得て、今年度も全面対面開催が実現しました。朝から晩まで物理漬けのとても濃密な9日間だったと思いますが、参加学生の皆さんが日に日に研究者らしいせいかんな顔つきになっていき、最後に修了証を手に少し誇らしげに帰っていく後ろ姿を見送りながら、本当に無事に実施出来て良かったと思います。感慨無量です」と振り返りました。

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