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KEK測定器開発テストビームラインの研究会を開催―開発の成果と機能強化を議論
2026年7月27日
素粒子実験で用いられる検出器は、実際の実験に導入される前に、粒子ビームを使って性能を評価する必要があります。KEKの「測定器開発テストビームライン」はそのための施設で、2023年度から共同利用を行っています。
2026年6月22日から24日にかけて、KEKつくばキャンパスにおいて、素核研ワークショップ「テストビームラインの機能強化」が開催され、オンライン参加を含め71名の研究者らが参加しました。今回の研究会では、これまでの利用経験を共有するとともに、高性能でより使いやすいビームラインの実現に向けて議論しました。
世界各国の次世代検出器開発を支えるテスト実験
研究会では、KEKのBelle II実験のほか、欧州合同原子核研究機関(CERN)で進められているATLAS実験、ALICE実験など現在進行中の大型実験の高度化に加え、日本で建設が進むハイパーカミオカンデ計画、さらにCERNの将来円形衝突型加速器(FCC-ee)や、米国で進められている電子・イオン衝突型加速器(EIC)などの将来計画に向けて検出器開発を進める国内外の研究グループから、測定器開発テストビームラインを活用した開発成果や性能評価の結果が多数報告されました。
以下では、研究会で報告された事例の中から、三つを紹介します。
一つ目は、CERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の高輝度化計画に向けた実験報告(2025ARTBL003)です。日本で量産が進む「ITkピクセルモジュール」の実機性能を、3GeV電子ビームを用いて評価しました。センサー全体で粒子を検知できる完全空乏状態において、99.8%の検出効率を達成し、量産品の性能がATLAS実験の要求を満たすことが実証されました。
二つ目は、ハイパーカミオカンデの前置検出器用に開発を進めている、水標的液体シンチレータ検出器の性能試験報告(2025ARTBL013)です。2022年に初めて試験した時と比べて7〜9倍の高光量が得られることが実証され、期待通りの性能を満たしていることがわかりました。実機製作に向け大きな一歩を踏み出すことができたと言えます。
三つ目は、FCC-eeとEICに向けて韓国のグループが進めている、二重読み出しカロリメーターに関するテスト報告(2025ARTBL001、2025ARTBL004)です。特にEIC向けに今後テスト実験の規模が大きくなることを見据え、ビームのエネルギー設定精度に関する要求が議論されました。
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初日の夕方には、「Detector R&D Snack Time 」が設けられ、参加者同士が軽食を囲みながら交流しました
さらなる使いやすさを目指して
テストビームラインの利便性を高めるために、インフラ整備や機能強化を継続的に進めています。
2025年7月に実施した四重極電磁石(Q-Magnet)の上流への移設により、ビーム強度を従来の約1.4〜1.8倍に向上させることができました。一方で、シミュレーションで予想される強度には及ばず、また時によって増減するなど、いまだ完全には理解できていない課題もあります。今後は、ビームの位置やサイズをリアルタイムで監視・調整するシステムを導入するなど、ビーム特性の理解を深め、強度のさらなる向上へとつなげていきます。
また、2026年末までの完成を目指して新しいテレスコープ(ビーム粒子の飛跡を確認する装置)の整備を進めており、位置測定精度の向上を図ります。さらに、永久磁石を設置し粒子の偏向度を測定することで、ビームエネルギーの絶対値および広がりを1%の精度で決定できるようにします。そのほか、研究会では、ノイズ対策など、テスト環境の改善についても議論しました。
研究会を主催した測定器開発センターの江成 祐二准教授は、「今回の研究会で共有された知見や課題をもとに、高精度なテレスコープの導入やビームモニタリングの自動化など、ユーザーとの協働でインフラ整備を加速させていきます。国内外の検出器開発を支えるハブ施設として、次世代に向けた新しいアイデアを形にできる場を提供します」と今後の抱負を述べました。




