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研究する面白さを体感した9日間―第20回サマーチャレンジ

8月18日から26日にかけてKEKで第20回サマーチャレンジが開催され、全国から71人が参加しました。サマーチャレンジ(サマチャレ)は、大学3年生および高専生を主な対象とした科学技術体験型スクールです。最前線で活躍する研究者による講義や、素粒子・原子核に関する本格的な演習のほか、KEKつくばキャンパスと東海キャンパス(J-PARC)の施設見学などが主なプログラムです。参加者は、これらの体験を通して基礎科学の研究に触れ、科学を志す仲間と交流しながら、今後の進路について考えます。

サマチャレは、高エネルギー物理学研究者会議と原子核談話会との共催で、KEK加速器科学国際育成事業(KEK IINAS-NX)の支援を受けて実施されました。テーマの選定・準備から演習中の指導まで、多くの大学・研究機関の協力を得て行っています。今年は、KEKのほか、東北大学、筑波大学、東京大学、お茶の水女子大学、東京科学大学、国際基督教大学、東京都立大学、名古屋大学、奈良女子大学、京都大学、大阪大学、神戸大学、九州大学、新潟大学などが協力しました。

また、今年は第20回という節目を迎え、期間中には20回記念イベントも開催されました。

講義で学び、演習で研究を体験する

今年の講義は、「宇宙」「素粒子」「原子核」「加速器」「放射線」「統計と誤差」をテーマに行われました。また、参加者は以下の12の班に分かれ、それぞれの演習課題に取り組みました。

  • 演習1班 量子の波動性と粒子性〜1光子を発生させて干渉を見る〜
  • 演習2班 ワイヤー1本で素粒子をとらえる ~素粒子・原子核実験の心臓部分「ワイヤーチェンバー」を作ろう~
  • 演習3班 先進加速器を体験しよう~実験と電磁波シミュレーターで体験する先進加速器~
  • 演習4班 磁気スペクトログラフ ~ 磁場の中での荷電粒子の振る舞い ~
  • 演習5班 光子を実感する
  • 演習6班 霧箱で素粒子を測る
  • 演習7班 宇宙線観察で学ぶ粒子の崩壊とスピン回転
  • 演習8班 小型ラドン検出器を作ろう~IoT×物理の最前線~
  • 演習9班 自然放射線を測定しよう
  • 演習10班 宇宙線ミューオンを捕まえて素粒子の対称性を調べよう
  • 演習11班 反粒子を捕まえよう~最軽量原子ポジトロニウムの崩壊観測実験~
  • 演習12班 量子センシング・量子制御~NVセンターでラビ振動を見てみよう~

演習では、研究者やTAの指導を受けながら、実験装置の製作や調整、測定、データ解析などを参加者自身が進め、思い通りの結果が得られないときには、班の仲間と原因を考え、条件を変えて測定するなど、試行錯誤を重ねました。

つくば・東海キャンパスの研究施設を見学

8月20日には、KEKつくばキャンパスの研究施設を見学しました。SuperKEKB加速器、PF(フォトンファクトリー、放射光施設)、Belle II測定器、QUP(量子場計測システム国際拠点)を訪れ、研究施設や実験装置を間近で見ながら研究者から説明を受けました。

翌21日には東海キャンパスを訪れ、J-PARCのリニアック(線形加速器)、メインリング(MR)、ハドロン実験施設、ニュートリノ実験施設、物質・生命科学実験施設(MLF)を見学しました。

講義や演習で学ぶ物理が、大型加速器や測定器を使った実際の研究とどのようにつながっているのかを知る機会となりました。

第20回を記念して――小林誠KEK特別栄誉教授による特別講演

今年はサマチャレが20回目を迎えたことを記念し、8月22日に特別イベントが開催されました。

特別講演には、2008年ノーベル物理学賞受賞者の小林誠KEK特別栄誉教授が登壇しました。小林特別栄誉教授は、量子力学から素粒子物理学の標準模型に至るまでの歴史的な発展をたどりながら、「教科書には書かれない」研究者の思考過程や、日本の研究者による貢献について紹介しました。

特別講演に続く20回記念イベントには、今年の参加者に加え、サマチャレの立ち上げに携わった関係者や卒業生らも参加し、これまでの20年間を振り返るとともに、サマチャレでの経験とその後の研究やキャリアとのつながりについて語りました。

20回記念イベントと特別講演については、KEKの記事(サマーチャレンジ20回開催を記念して、特別イベント開催)で詳しく紹介しています。

さまざまなキャリアを知り、自分の進路を考える

毎年恒例の「キャリアビルディング」も行いました。素核研の関口哲郎准教授がファシリテーターを務め、研究者や技術職員、サイエンスコミュニケーターなど5人のパネリストが登壇しました。

第1部では、参加者への事前アンケートの結果も紹介しながら、パネリストが現在の仕事に至った経緯や、仕事の面白さ、やりがいについて語りました。素粒子実験や天文学・宇宙論の研究に加え、J-PARCや測定器開発を支える技術職、先端科学と社会をつなぐサイエンスコミュニケーションなど、物理学を学んだ先にある多様な仕事やキャリアが紹介されました。

第2部では、参加者が5つのグループに分かれ、それぞれのグループにパネリストが加わり質問セッションを行いました。「大学院や研究室をどう選べばよいか」「博士号を取得できるか不安」「研究への興味が途中で変わることはあるのか」「海外のポスドクの情報はどのように探すのか」「AIを研究にどう使っているのか」など、進学や研究生活について具体的な質問が寄せられました。

パネリストからは「自分探しはずっと続くと思っておいた方がよい」「方向転換していいんだよ」といった言葉がありました。参加者からは「やりたいことが決まっている人が多くて少し焦っていたけれど、もう少し楽に考えてよいんだなと思った」という声も聞かれ、自分の興味や将来との向き合い方についても考える時間となりました。

9日間の成果を発表

最終日には、各演習班による発表会が行われました。発表が迫る中、結果の解釈をめぐって議論が白熱する班もあり、時間ぎりぎりまでデータの解析や発表の準備が続きました。そうして得られた実験結果と考察をまとめ、各班が発表に臨みました。発表後には、他班の参加者や研究者から、測定手法や実験条件、結果の解釈などについて質問が飛び交いました。

発表会に続いて修了式が行われ、9日間のサマチャレを締めくくりました。

修了式では、サマーチャレンジを創設した元素核研所長の故・高﨑史彦氏のご家族からの寄附により、参加者全員に素粒子・原子核物理に関する本が贈られました。

9日間を終えた参加者から寄せられた感想の一部を紹介します。

  • 実験結果の解釈について意見が対立した際には、真実の探求という共通の目標に向けて、お互いが建前も遠慮もなくぶつかり合うという経験ができました。このような経験ができたのは、サマーチャレンジだからこそだと思います。
  • つくばキャンパスと東海キャンパスの見学ツアーでは、一つ一つの実験施設が巨大で、多くの人の労力と数多くの技術が詰まっていることに感動しました。大学の講義や学生実験で学んだことが検出器や実験に使われていることに気づき、今学んでいることの意義を実感しました。
  • キャリアについて前向きに考えられるようになりました。研究機関の広報や技術職、サイエンスコミュニケーターなどの話を聞いて選択の幅が広がり、逆に研究者を目指しやすくなりました。
  • サマーチャレンジを通して、研究が好きだから自分の興味をもっと突き詰めたいという気持ちに気づき、似た興味を持ち、支え合い、議論してくれる仲間にも出会えました。私の人生において、この上なく濃いビッグイベントでした。

第20回の校長を務めた素核研の江成祐二准教授は、以下のように、9日間を振り返りました。

「第20回という大きな節目を迎えたサマーチャレンジを無事に完走でき、大変嬉しく思っております。講義や演習、施設見学、そしてキャリアビルディングに至るまで、すべてのプログラムを順調に進めることができたのは、半年前から念入りな準備を進めてくださった事務局や委員の皆さまのおかげです。心より感謝申し上げます。
今年はキャンパスの外でも自主的に活動できる機会を増やしたこともあり、参加した学生の皆さんは、よりリアルな研究生活を体験できたのではないでしょうか。演習の現場では、壁にぶつかって真剣に悩み、そこから改善に向けて試行錯誤しながら熱く議論を交わす姿を間近で見ることができました。まさに単なる『スクール』の枠を超えた、『サマーチャレンジ』という名にふさわしい熱気あふれるイベントになったと感じています。」

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