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last update:09/09/24  

   image この夏、没頭する    2009.9.24
 
        〜 サマーチャレンジ:寝食をともにした9日間 〜
 
 
  8月20日から9日間、全国31の大学から3年生中心の78人が参加してサマーチャレンジが開催されました。研究者との生きた交流経験を通して、基礎科学を担う若い知性を育てることを目的に行われており、今年で3回目です。6つの講義、3回のKEK施設見学ツアー、そして13のグループに分かれて行った演習とその成果発表を全て終え、8月28日、全員が修了証書を手にしました。

講義で始まる毎日

初日、ノーベル物理学賞を受賞した小林誠KEK特別栄誉教授の特別講演タイトルは「反物質入門」。なぜ我々は物質の世界にいるのか、という問いかけから6つのクオークを提唱した小林・益川理論、Belle実験、そして宇宙の理解はこれから深められるという内容に、参加学生たちは強く引き込まれました。

講義は連日、世界トップクラスの講師によって行われました。「加速器」(小磯晴代・KEK教授)、「実験ミニマム」(中野貴志・大阪大教授)、「原子核」(初田哲男・東大教授)、「宇宙」(小玉英雄・KEK教授)、そして「素粒子」(森俊則・東大教授)といった広範な領域を俯瞰するものでした。参加学生は連日の演習の疲れからくる睡魔と闘いながらも、数々の名講義から多くのことを獲得したようです。

3回のKEK施設見学ツアー

会期中、つくばキャンパスと東海キャンパスの実験施設見学ツアーを行いました。つくばキャンパスでは、Bファクトリー、ATF、フォトンファクトリー、スーパーコンピュータなどを2回に分けて見学、また東海キャンパスではJ-PARCのニュートリノ、ハドロン実験施設などを1日かけて見学しました。ツアーに先立ち、担当の先生方によって施設概要紹介の講義が行われ、参加学生の理解を促しました。

6人ずつの演習グループが13

参加学生が最も時間を割いたのは13のテーマに及ぶ実験でした。13の演習テーマ毎に主に6人のチームが構成されました。皆、初対面です。担当教員の演習概要説明を受けた後、装置作りから始まり、実験、結果の検討・評価、再実験が連日行われました。実験が終わって宿舎に帰った後も、このチームで深夜まで実験や結果について議論が行われていました。13のテーマは素粒子・原子核のみならず、物理学の広い範囲をカバーした以下の内容です。各大学の演習責任者、多くの若きTAの皆さんに精力的に指導をしていただきました。今年のTAのなかには、2年前のサマーチャレンジ卒業生が9名も含まれており、サマーチャレンジが初めて、横糸(参加者同士)と縦糸(卒業生と参加者)で編み始められたことを意味します。

ワイヤー1本で素粒子をとらえる(東北大:田村、三輪)
スパークチェンバーで宇宙線を目で見よう(首都大:住吉、東工大:久世)
最新鋭のガス検出器で素粒子を見る(東大:山下、小澤)
最新のシンチレーション検出器を究める(横浜国大:中村)
γ線角度相関測定(ソウル大:谷田、東北大:小池)
ラドン検出器の製作と測定(筑波大:三明)
磁気スペクトログラフ(大阪大:野海)
超伝導高周波空洞(KEK:齋藤)
プランク定数を測る(大阪大:山中)
宇宙の温度を測ってみよう(岡山大:石野)
時間反転対称性の破れの探索(KEK:清水)
エーテル探査実験(東大:黒田)
万有引力の法則の検証(立教大:村田)

キャリアビルディング

このサマーチャレンジのユニークな企画の一つが、先輩研究者を囲んで学生たちが研究者生活について疑問に思うこと、どうしても知りたいことを質問するキャリアビルディングです。中日の夕食後、2時間半にわたって行われました。パネラーは浅賀岳彦(新潟大:理論)、森俊則(東大:実験)、関口仁子(理研:実験)、小磯晴代(KEK:実験)、多田将(KEK:実験)の5名の皆さん。パネラーの皆さんは多彩なキャリアの持ち主で、学生からの多くの質問に名答、珍答を交え回答していただきました。

発表会と修了式

最終日は、9日間にわたる演習成果の発表会です。13のグループがそれぞれ20分間、自分たちの行った演習成果を全員の前で発表しました。多くのグループは6人全員が順に少しずつ発表するスタイルをとりましたが、中には1人が代表して発表するグループもありました。発表する前は緊張していた学生たちも発表が終わるとほっとしたようです。その後、ポスターにした演習内容を取り囲んで、より詳しい質疑応答、白熱した議論が続きました。修了式では高崎KEK理事から一人ひとり、修了書を受け取りました。この修了書には、鈴木機構長の直筆で「未来の博士号」と揮毫されています。今年、13の演習について優劣を競うことはしませんでした。このスクールの校長である春山富義KEK教授はそのかわりに、13の演習グループそれぞれに1冊ずつ、グループ全員の名前が書かれた小林誠特別栄誉教授サイン入りの本を校長特別賞として贈りました。最初の人が読み終えたら、次の人に送り、読み終えたら次の人に…、こうして各グループが、そしてグループ同士が横に繋がることで今年の参加学生78人がいつまでもまとまっていてほしい、という願いからです。

そして...

参加学生は自分たちが行った演習についてレポートの提出が義務付けられています。既に多くのレポートが提出され、まもなく全員のレポートを「報告書」にまとめることで今回のサマーチャレンジは終了します。

今回のテーマどおり"この夏、没頭した"参加学生たちは、それぞれのキャンパスに戻りました。今、各グループに渡された校長特別賞の本は、どこでだれが読んでいるのでしょう。そして、全員が読み終えたとき、どのグループからなにが始まるのでしょうか。サマーチャレンジに関わったスタッフは今、自分のことのようにわくわくしています。



※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ

→サマーチャレンジのwebページ
  http://ksc.kek.jp/

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[図1]
サマーチャレンジのポスター
拡大図(77KB)
 
 
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[図2]
78人の参加学生とスタッフたち。
拡大図(103KB)
 
 
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[図3]
特別講演を行う小林誠KEK特別栄誉教授。
拡大図(35KB)
 
 
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[図4]
連日、世界トップクラスの講師による講義が行われた。
拡大図(72KB)
 
 
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[図5]
KEKB加速器のトンネルを見学する学生たち。
拡大図(80KB)
 
 
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[図6]
13のテーマ毎にチームを組んで演習に没頭する参加学生。
拡大図上(69KB)][拡大図下(56KB)
 
 
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[図7]
キャリアビルディング・パネラーの皆さん。
拡大図(67KB)
 
 
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[図8]
最終日、9日間にわたる演習の成果を全員の前で発表した。
拡大図(68KB)
 
 
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[図9]
ポスターを前に演習成果を議論しあう参加学生たち。
拡大図(74KB)
 
 
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[図10]
修了書授与式。
拡大図(65KB)
 
 
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[図11]
校長特別賞として各グループに贈られた本。
拡大図(55KB)
 
 
 
 
 

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