第一回SuperKEKB/Belle II 国内巡業セミナー実施
#トピックス6月7日(火)後田裕KEK准教授が東京工業大学大岡山キャンパスで行われた物理学科学生対象の量子物理学・ナノサイエンス第40回セミナーで特別講師を務めました。このセミナーは、東京工業大学主催のセミナーですが、本年より開始された「SuperKEKB/Belle II 国内巡業セミナー」の第1回としても位置付けられています。KEK素粒子原子核研究所Belle II およびSuperKEKB加速器グループでは「SuperKEKB/Belle II 国内巡業セミナー」を開始しました。 このセミナーは、SuperKEKBに関わっているKEKの研究者が全国の大学や研究所でSuperKEKB加速器とBelle II 測定器に関する講演を行い、若手研究者らの興味関心を喚起し、理解を深めてもらうことを目的としています。
後田氏は「SuperKEKB/Belle II 計画の現状と展望」と題し、SuperKEKBの前身にあたるKEK B−factoryで行われた、CP対称性の破れの検証をはじめとしたB中間子に関わる物理を解説した後、Belle II で目指す新しい物理について解説しました。さらに、ビームバックグラウンドの対策や、Belle II 測定器で新しく導入されるDEPFETと呼ばれるピクセル型シリコン検出器の仕組みとデータの読み出し方法など、Belle IIの現在の準備状況を説明しました。このように、KEK B-factoryでの物理の話をきっかけに、SuperKEKBとして現在進行中の加速器や測定器の高度化に関する話となりました。
参加した学生からは「B-factoryの物理を詳しく聞くことができて非常に勉強になりました」「検出器を薄く作るよう気を使っており、新鮮に感じました」などのコメントがありました。後田氏はKEKB加速器の有限角度衝突方式での成功を例として挙げ「駄目かもしれないと思われている理由が、きちんとした根拠に基づくものかを見極めることで、新しい研究の道筋が開けることもあります」と述べ、学生の今後に期待を寄せました。
<用語解説>
- ※1 SuperKEKB
- 2014年本格稼働を目指し進められているプロジェクト。SuperKEKBに向けてB−factoryを担ってきたKEKB加速器およびBelle測定器は、2010年6月に運転を停止した。現在はいずれも高度化作業が行われている。
- ※2 ビームバックグラウンド
- データを取得したいと狙っている素粒子反応以外の望まれない事象が検出器に与える痕跡のこと。SuperKEKBにおけるビームバックグラウンドの原因として例えば、ビームである粒子の塊(バンチ)内でビーム粒子同士が衝突(タウシェック散乱)してしまい軌道を外れるものや、ビーム粒子が磁石によって曲げられる際に出す光(シンクロトロン光)などが挙げられる。
- ※3 DEPFET
- Belle II測定器において、ビームの衝突点の最も近くに設置される検出器。B中間子が崩壊する位置をBelle測定器に比べ、より精密に測ることが出来る。 SuperKEKBはスイス・ジュネーブのCERN(欧州合同原子核研究機関)のLHC(大型ハドロンコライダー)に比べ低いエネルギーのビームを使用するため、検出器を通過する粒子が多重散乱の影響を受けやすく、それを抑えるために検出器を薄く製作する必要がある。
- ※4 有限角度衝突方式
- 衝突ビーム加速器において、2つのビームに角度をつけて衝突させる方式のこと。衝突点以外でのビーム・ビーム相互作用や、測定器への放射光の影響を軽減できる長所を持つ。
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