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ナノビームで目指す世界の頂点 2010.3.4 |
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〜 スーパーBファクトリーへの挑戦 〜 |
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電子と陽電子をぶつけることでミクロの世界を探求するKEKのBファクトリー加速器KEKB。2009年には一秒間あたりに電子と陽電子が衝突する回数が設計値の2倍となり、世界最高の衝突頻度による最先端の素粒子物理学の探求を続けています。 今、さらに素粒子物理学の大きな飛躍を目指してスーパーKEKB(SuperKEKB)へと加速器の性能を増強する計画がスタートラインに立とうとしています。その性能増強の基本設計方針である「ナノビーム方式」についてご紹介しましょう。 衝突頻度を上げるには B中間子と反B中間子の対を大量に生成することから「Bファクトリー」と名付けられた現在の研究は、日本とアメリカ(SLAC研究所)の競争と協調から、さらに次世代の性能をもつスーパーBファクトリーへと世代が変わりつつあります。ナノビーム方式とは、イタリア人科学者のP.Raimondi氏(INFN)とイタリアグループにより提案された方式です。 如何に多くのB中間子・反B中間子対を生成できるかは、電子と陽電子を如何に多く交差させ、衝突の頻度を上げることができるかにかかっています。この衝突の回数(ルミノシティ)を大幅にあげるためには、(1) 衝突点で電子ビーム、陽電子ビームのサイズを小さくし衝突の頻度を上げる、(2) ビーム電流を増加し、電子と陽電子の交差数を増し、衝突の頻度を上げる、(3) 電子ビームと陽電子ビームが衝突する時の条件となるビームビーム・パラメタを大きくする、の3つのキーポイントでの工夫が必要となります。SuperKEKBは、ビームサイズを小さくすることで20倍、ビーム電流を上げることによって2倍、 合わせて現在の40倍のルミノシティを目指しています(図1)。 ビームサイズを小さく、ビーム電流を大きくすれば、ルミノシティをどこまでも高くできるのでしょうか? そう簡単ではありません。ビームを、限度を超えて収束し衝突させると、ビーム同士が互いに及ぼし合う力が限界を超え、衝突によってビームサイズの増大やビーム寿命が短かくなることが起こり、ルミノシティは頭打ちになったり、かえって低下したりします。この限界を示す指標となるものが(3)で述べたビームビーム・パラメタです。ビームビーム・パラメタについては、既に現在のKEKBで達成されている値(垂直方向ビームビーム・パラメタ=0.09)をSuperKEKBでも採用することになっています。 より角度をつけて交差 電子ビームも陽電子ビームもバンチという塊となってリングを周回します。SuperKEKBの衝突点でバンチが交差する様子を模式的に描くと図2の様にな ります。電子ビームと陽電子ビームの軌道は現KEKBの1.3度よりさらに大きい4.8度で交差し、長く、細く、極めて薄いバンチ同士が進行方向300マイクロメートル(μm=1000分の1mm)程度の領域で交差します。 衝突点におけるビームの大きさも単純に小さいほど良いわけではなく、適正な値があります。衝突点でビームの大きさが小さくなるように絞れば絞るほど、衝突点から離れた場所でのビームの大きさが逆に急激に増大します(図3の赤線に注目)。このため、正面衝突の場合には、バンチの長さに見合う限度を超えて衝突点でのビームサイズを絞っても、効果的なルミノシティ増加に繋がりません。ところが、SuperKEKBのようにバンチに大きな角度をつけて、衝突する領域が短くなるように交差させると、ビームの大きさを絞っても有効にルミノシティを上げることが可能になります。衝突点における垂直方向のビームの大きさ(ビームサイズ)は、KEKBでは約1μmですが、SuperKEKBはこれを約60ナノメートル(nm=100万分の1mm)まで絞ります。 数々の改良を加えて このような極小のビームサイズを実現するためには、リング全周の磁石配置で決まるビーム粒子の位置と運動量が取り得る値の広がり(エミッタンス)も小さくしな ければなりません。また安定に高いルミノシティを維持するには、ビーム寿命が充分長く、入射器からのビーム入射効率も良くする必要があります。SuperKEKBでは、衝突点領域はもとより、以下の様にリングおよび入射器全般に大きな改造を施し、ナノメートルサイズのビームを実現します (図4)。
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