物構研シンポジウム'11 開催

 

12月6日、7日、つくば国際会議場(茨城県つくば市)にて物構研シンポジウムが開催され、国内外から約150名の研究者が集まりました。このシンポジウムはKEKの物質構造科学研究所(物構研)により2008年から年一回開催されているものです。昨年に引き続き「量子ビーム科学の展望」をテーマとし、放射光、中性子、ミュオン、低速陽電子ビームに加え、新たに次世代光源ERL(エネルギー回収型ライナック)が切り拓くサイエンスについて議論する場となりました。imsssympo_image_01.jpg

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講演の様子

初日、フォトンファクトリーの次世代光源として計画を進めているERLとXFEL-O(共振器型X線自由電子レーザー)の計画について河田洋ERL計画推進室長より説明があり、次いでその実証器として建設を進めているコンパクトERLの進捗とERL実現のための技術開発について報告がありました。そしてERLによる放射光の高コヒーレンス、高時間分解能という特性によって可能となるサイエンスの例が示されました。

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国内外からの招待講演者ら
左から:河田洋ERL計画推進室長(物構研)、村上洋一構造物性研究センター長(物構研)、Lin X. Chen博士(アルゴンヌ国立研究所)、下村理所長(物構研)、若槻壮市構造生物学研究センター長(物構研)、Sol Gruner博士(コーネル大学)、J. G. Park博士(ソウル国立大学)、阿部竜博士(北海道大学)

その後、3名の招待講演者により、ERLサイエンスの主要テーマと位置付けられている「再生可能エネルギーの研究」に関連するテーマを中心に、阿部竜博士(北海道大学)から「水分解光触媒研究」について、Lin X. Chen博士(アルゴンヌ国立研究所)から「太陽電池」について発表されました。また、同じくERL計画を次期計画として進めているコーネル大学のSol Gruner博士は回折限界のX線の利用について発表し、それぞれの立場から多岐に渡るERL次期光源実現への期待を語りました。

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ポスターセッションの様子

二日目には強相関電子構造物性研究について、電子自由度秩序、表面・界面における電子相関、有機エレクトロニクス、ソフトマター&バイオマターの秩序と乱れという4つのセッションが行われました。物質中の電子同士が強く影響し合う強相関系は、その特性の開拓と起源の解明とともに、電子デバイスなどへの応用が検討されており、研究が盛んに行われている分野です。伝導層、絶縁層の厚みを変えることで電子を閉じ込め、振る舞いの制御に成功した成果などが報告されました。海外からの招待講演では、Di-Jing Huang博士(台湾NSRRC)が酸化物人工格子の放射光実験結果について、J. G. Park博士(ソウル国立大学)が鉄酸化物などの中性子実験について、F. L. Pratt博士(英国ISIS)からは有機物で見つかったスピン液体のミュオン実験結果が報告されました。

最後に、村上洋一構造物性研究センター長が物構研を代表し参加者に対して謝辞を述べ、「フォトンファクトリーやJ-PARC物質・生命科学実験施設を共同利用する研究者たちのサイエンスを推進するために、J-PARCの運転再開とERLの実現に向けて最大の努力をしていきたい。」と語りました。今年は、震災の影響によって施設が運転停止したこともあり、共同利用施設として、研究者たちのニーズによって支えられ、新しいサイエンスを創出する場であることを再認識するシンポジウムとなりました。

関連サイト

物構研シンポジウム'11
物質構造科学研究所

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