【KEKのひと #8】「サイエンスのためにテクノロジーを提供する」 瀬谷智洋(せや・ともひろ)さんインタビュー
#KEKのひとKEKの大がかりな加速器実験を行うために、様々な高度な技術を持った技術職員は、いなくてはならない存在です。2017年4月現在、158人の技術職員が活躍しています。今回は、その中で中性子の検出器の開発に携わる物質構造科学研究所・中性子科学研究系准技師で、趣味ではロードバイクの大会にも出場する瀬谷智洋さんにインタビューしました。
―KEKではどのようなことを?
「東海村のJ-PARCで、中性子検出器の開発や研究データを解析したりするサーバーの管理などをやっています。物構研の広報委員としてWebサーバー管理なども行っています。今年で9年目です」
―高専を出てKEKに来られたそうですね。
「茨城高専でエレクトロニクスや情報・通信技術など、電気・電子に関わることを体系的に学びました。2009年に卒業してKEKに。在学中は、当時建設中だったJ-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)の見学もしました。原子より小さい、素粒子の法則を調べるために、全長が何キロもある加速器を使って壮大な実験をしているところや、素粒子の法則を調べることで、宇宙の成り立ちを紐解くことができるところに興味をそそられました」
―検出器の開発は、実際はどのような作業でしょう?
「中性子を使って物質の構造解析を行うのですが、その解析には中性子の飛行時間と、散乱される角度の測定が重要になってきます。散乱される飛行時間や角度を検出するために、FPGAという集積回路を使い、1億分の1秒単位で測定できる電子回路の開発をしています。また、データを収集する、保存する、解析するそれぞれの作業で複数のサーバーを使っていて、それらの、サーバーの導入や維持管理も行います」
―大変なところはどのようなところでしょうか。
「新しい検出器を作って、何度もテストしても、実際に使う場所に持っていくとたいがいは動かない。開発は、常に想定外のことが起きたりしますね。長い時間をかけて調整しなければいけないこともあります」
―自転車もかなり本格的にされているそうですね。
「一昨年前は月に500キロくらい走っていました。毎週末100キロ以上、トレーニングで峠を3つ越えるコースを走ったりしていました。坂道を汗とよだれと鼻水とでぐじゃぐじゃになりながら登ります(笑)頂上まで行った時のささやかな達成感のためですね。イベントで茨城県の日立市から新潟市まで300キロ、日本海に沈む夕日を見に行ったこともありますよ」
―自転車を始めたきっかけは。
「もともと機械好きなので、中学生の時からタイヤ交換をしたりブレーキを調整したり、自転車の部品をいじって遊ぶのが好きでした。本格的に始めたのは社会人になってから。一時期、実業団に入ることも考えましたが、普段の生活を犠牲にしてまではやれないと感じました」
―この先の目標は?
「昨年結婚して、自転車は今は2週間に1度、趣味と健康のために乗っています。仕事の面では、サイエンスのためにテクノロジーを提供していく。実験するにあたって必要な技術をサポートしていくということですね。新しい検出器だからこそ、できる実験を研究者の方と一緒に進めていけたらおもしろいなと思います」
―ありがとうございました。
(聞き手 広報室・牧野佐千子)
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