【KEKのひと #13】鉛筆の芯からダイヤモンドを作る? 深谷亮(ふかや・りょう)さん

 
光を使って鉛筆の芯からダイヤモンドを作れるかもしれない。光合成を人工で作り出せるかもしれない。加速器から出る放射光という光を使って、物質の構造を解析し、その性質を操る魔法のような研究に取り組むKEK物質構造科学研究所・特任助教の深谷亮さん。その研究内容について詳しく聞きました。

光を当てることで電子の状態や原子の構造を変化させる研究に取り組む深谷さん

―どのような研究を?

「放射光を使って、物質の過渡的な状態をスナップショットで見るようなことをしています。例えば、二酸化炭素から酸素を作る葉っぱの光合成を人工で作るには、光合成がどのように行われているか詳しく見る必要があります。その1兆分の1秒レベルでの変化の様子を、X線を使って見ています」

―そこまで小さな世界の変化が見えるのですね。

「ほかに分かりやすい例で言うと、鉛筆の芯からダイヤモンドを作る技術とか。高圧と高温で人工ダイヤモンドを作る技術はありますが、光を当てることで原子の状態を変化させて作れるかもしれないと、その変化の様子を原子レベルで観察します。X線を使うことで物質を構成している原子の配列を見ることができるのです」

―今取り組んでいる研究は?

「物質が秘めている新たな性質を、光を使って引き出せないかということです。例えば、電気抵抗がゼロである超伝導状態を作るには、通常、とても低い温度で冷やさなくてはいけませんが、光を当てて電子の状態や原子の構造を変化させることで、室温でできないかと」

―KEKに来る前はどちらに?

「東京大の大学院を出た後、東京工業大でポスドク(博士研究員)をしていました。その後KEKに来て現在は4年目です。光を使って物の性質を制御できるという現在の研究テーマに興味を持ったのは、学部の4年目でした。10年以上になりますね。X線を使ってこのような研究ができるところは、国内でも2か所のみです」

―KEKの施設を使わないとできない研究なのですね。

「ポスドク時代はレーザーの光を使って見ていました。その場合は、物性変化の引き金となる電子の動きは見ることができても、直接原子の動きを見ることはできません。ほかではできないとても恵まれた研究環境です」

―息抜きに行っていることはありますか?

「最近は水泳です。休みの時などに泳ぎに行きますが、ずっと泳いでいると頭の中が無になって、リフレッシュできます」

―ありがとうございました。

(聞き手 広報室 牧野佐千子)

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KEK物質構造科学研究所 構造物性グループ


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