新種の超原子核(二重ラムダ核)を発見-中性子星の内部構造の謎に迫る-「美濃イベント」と命名

 
  • 国立大学法人岐阜大学
  • J-PARC センター
  • 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
  • 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

概要

岐阜大学教育学部・工学研究科 仲澤和馬シニア教授のグループをはじめとする日・韓・米・中・独・ミャンマーの6カ国24 大学・研究機関の総勢103 名の研究者・大学院生からなる研究チームは、大強度陽子加速器施設(以下、J-PARC)を利用した国際共同実験 (J-PARC E07 実験)で、ベリリウム(Be)原子核を芯とする新種の二重ラムダ核を発見し、「美濃イベント(MINO event)」と命名しました。二重ラムダ核とは、通常は、陽子と中性子でできている原子核に、ストレンジクォークを含む「ラムダ粒子」が二つ入った超原子核です。現代物理学の大きなテーマは、物質を構成する素粒子「クォーク」に働く力の性質と仕組みの解明であり、その中で課題の一つが二重ラムダ核の研究で、二つのラムダ粒子が入ったことによる超原子核の質量変化の測定により、ラムダ粒子間に働く力の大きさを定量的に知ることです。この種の超原子核の発見は二例目で、最初のもの(「長良イベント」)もこのグループが発見していました。

ヘリウム4(He4)を芯とする二重ラムダ核(陽子2個、中性子2個、ラムダ粒子2個からなる)である長良イベントの発見により、ラムダ粒子間に働く力が引力であることが分かりましたが、今回の発見でもラムダ粒子間に働く力が引力であることが確認されました。二重ラムダ核検出をねらったE07 実験は、J-PARCを用いることにより、過去の実験の100 倍のデータを取りためることができました。今回発表する成果は、その解析による成果の第一弾です。今回の解析の成功は、今後、取りためたデータを解析すれば、芯となる原子核が異なる様々な二重ラムダ核が発見でき、それらの質量変化の測定から、ラムダ粒子間に働く力の知見が確実に増えることを意味するものです。それは、はるか宇宙の中性子星の内部構造の解明につながります。今後の解析にご期待ください。

本研究成果は、日本時間2019年2月22日出版の日本物理学会が刊行するオンラインオープンアクセス国際月刊誌『Progress of Theoretical and Experimental Physics』に掲載されました。

研究成果のポイント

  • ◇ストレンジクォークを持つ、100 億分の1 秒という短寿命のラムダ粒子二つを含んだ新しい超原子核(二重ラムダ核)の生成・崩壊を発見した。
  • ◇発見した二重ラムダ核(「美濃イベント(MINO event)」と命名)はBe 原子核を芯とするものであり、我々が2001 年に発見したHe4 原子核を芯とする「長良イベント」とは異なる全く新しいものである。
  • ◇美濃イベントの発見は芯の相違に伴う二重ラムダ核の質量変化の違いから、ラムダ粒子間に働く力の詳細を調べる第1歩である。
  • ◇今後さらにたくさんの二重ラムダ核の発見が期待され、力の詳細が明らかになれば、膨大な数のラムダ粒子が存在する可能性のある中性子星(超巨大な原子核)の構造解明に結びつくものと期待される。
  • ◇これは、はるか宇宙の中性子星の構造解明に、加速器を使った地上実験で迫るものである。

詳しくは プレスリリース をご参照ください。

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