ドゥニ・ペレガリックス元TYL所長の追悼シンポジウム「日本とフランスの架け橋」を開催

 
満開の桜の下で記念写真

KEKとフランスの研究機関が設立した連携研究所「湯浅年子研究所」(TYL)を通じて、日仏の素粒子物理学研究交流に多大な貢献をした、ドゥニ・ペレガリックス元TYL所長の追悼シンポジウム「日本とフランスの架け橋」(主催TYL、共催:AAA)が4月2日、KEKつくばキャンパスで開かれた。シンポジウムではかつてペレガリックスさんと交流があった日仏の研究者らが彼の功績やエピソードなどを語った。また、同夜開かれたレセプションではペレガリックスさんの奥さまも出席、TYLから彼の日仏交流への貢献に対して感謝状が贈られた。ペレガリックスさんは国際リニアコライダー(ILC)の日本誘致にも熱心だったので、ILCの推進組織のひとつ、先端加速器科学技術推進協議会(AAA)も共催した。

ペレガリックスさんは2006年に日仏素粒子物理学研究所(FJPPL)(2009年にTYLに改名)を創設。KEKとフランス原子核素粒子研究所(IN2P3/CNRS)、フランス宇宙基礎科学研究所(IRFU/CEA)などとの日仏交流に大きな役割を果たした。昨年6月27日、欧州合同原子核研究機関(CERN)に近いフランスの自宅の山合をサイクリング中に心臓発作のため亡くなった。

冒頭、KEKの幅淳二理事が、2010年からKEKで春に開かれている理系女子高生向けのキャンプ「TYLスクール」やお茶の水女子大が設立した湯浅年子賞などの歴史を紹介。「みなさん、彼の言葉と思い出を呼び起こしましょう」とあいさつした。 続いて鈴木厚人前機構長が「2006年からDenisとともに」というタイトルでFJPPL設立から始まった日欧研究協力の歩みを紹介。最後に、ペレガリックスさんと一緒に取り組んだ、省エネと環境影響、地域産業の活性化を考慮した「グリーンILC」について紹介。「私たちは日本とフランスを繋ぐ強力な支柱を失った」と結んだ。

菅原寛孝元機構長は2004年から2009年にかけて総合研究大学院大学で展開された戦争と平和プロジェクトについて語った。ペレガリックスさんは、5回のワークショップ全部に参加するなど極めて熱心だったという。また、ILCのような大きな国際的研究所ができることで、人種や文化の融合が進み、科学知識が世界に遍く広がることで南北格差が緩和され、世界平和が実現できると信じていたと語った。

素粒子原子核研究所の藤本順平講師と栗原良将講師は「ファイマン振幅の自動計算の夜明け」と題して、ペレガリックスさんとともに世界に先駆けて研究を進めた自動計算の歴史を紹介。お茶の水大学の菅本晶夫名誉教授はTYLの活動を通じて知り合ったペレガリックスさんとの思い出を語った。KEKの吉岡正和名誉教授は東北で考察が進められているグリーンILC構想を、加速器研究施設の佐伯学行准教授は、CERNでともに研究をした思い出やグリーンILCに関する共同研究などについて話した。

最後に、CNRS東京事務所長のジャック・マルヴァルさんはペレガリックスさんとのCNRSでの思い出を、フランソワ・ル・ディベルデールさんはIN2P3職員として米国を担当し、ペレガリックスさんが日本担当として共に働いた思い出を紹介した。

CNRSでの思い出を語るジャック・マルヴァルさん

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