世界最高クラスの新型電解質材料を発見-燃料電池・センサー・電子材料等の開発を加速-

 
  • 東京工業大学
  • 高エネルギ-加速器研究機構
  • J-PARCセンタ-

概要

東京工業大学 理学院 化学系の八島正知 教授、張文鋭 大学院生(博士後期課程3年)らの研究グループは、Dion-Jacobson 相では初めての酸化物イオン伝導体(酸素イオン伝導体、あるいは O2− 伝導体ともいう)CsBi2Ti2NbO10-δを発見した。さらに酸化物イオン伝導度(酸素イオン伝導度ともいう)が高くなる高温での結晶構造や、酸化物イオンの拡散経路の解明により、この新しい酸化物イオン伝導体が示す高いイオン伝導度の発現機構を明らかにした。 高温かつ広い酸素分圧範囲で、この新型イオン伝導体は安定であることがわかった。この新材料の発見は、結晶構造データベースにおける83個のデータのスクリーニング、ならびに「陽イオンCs+のサイズが大きいこととBi3+の変位によるイオン伝導度の向上」という新概念の導入によって実現した。こうした新設計法による高イオン伝導体の発見は、固体酸化物形燃料電池や酸素濃縮器の高性能化や、新しい酸化物イオン伝導体や電子材料の開発を促進すると期待される。

なお本研究は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所/J-PARCの神山崇 教授らとの共同研究である。CsBi2Ti2NbO10-δの結晶構造解析には、J-PARCに設置された超高分解能中性子粉末回折装置 SuperHRPD、ならびに高輝度光科学研究センターSPring-8に設置された放射光X線回折計を用いた。

本研究成果は、2020年3月6日に英国の科学雑誌 Nature Communications に電子版として掲載され、注目論文(Editors’Highlight)に選出された。また、2020年3月の日本セラミックス協会の年会でトピックス講演に選出された。

研究成果のポイント

  • ◆新設計法により、層状ペロブスカイトの一種である Dion-Jacobson 相で世界初の酸素イオン伝導体を発見し、世界最高クラスの酸素イオン伝導度を実現
  • ◆結晶構造とイオン拡散経路の解析から、高い酸素イオン伝導度の原因を解明
  • ◆革新的な燃料電池、酸素分離膜、触媒、センサー、電子材料等の開発を促進してエネルギー・環境分野に貢献すると期待

詳しくは プレスリリース をご参照ください。

TOP