固体中での電子は大きく二種類にわけて考えることが出来ます。一つは内殻電子と呼ばれ,原子核の周りの比較的内側の電子軌道にいて,原子核に強く結合し,その原子核の周辺にのみとどまっている電子です。二つ目は外側の電子軌道で原子核とはあまり強く結合していない電子です。固体中ではこの電子は特定の原子に属していると言うことは出来ません。物質の性質を決めているのはこの電子です。この電子の状態は原子において電子の状態を決めていた方法では表せません。電子のエネルギーの観点からいえば,原子で考えたのと同様に,固体中でも電子には存在できるエネルギー状態と存在できないエネルギー状態があり,存在できるエネルギー領域をエネルギー・バンドと呼び,存在できない状態をバンド・ギャップとよびます。それぞれのバンドは受け入れられる電子の数が決まっていて,電子は原子での場合と同様にエネルギーの低い状態から先に埋まっていきます。エネルギーバンドとそれが電子によって満たされる状態は以下の図のように分類できます。

絶縁体と金属と2種類の半導体のそれぞれのエネルギー・バンドが電子によって占められている様子を模型的に示す。

絶縁体
或るエネルギーバンドまでは電子が詰まっているがそれよりエネルギーの高いバンドには全く電子が無い状態では,外部から電場がかかっても電子が動く事が出来ずに絶縁体となります。
良導体
いちばんエネルギーの高い電子が入っているエネルギーバンドが一部分だけ満たされている場合には,電子が外部からの電場に応答して移動することが出来るので良導体となります。このようなエネルギーバンドを伝導帯といいます。
半導体
絶対零度に近い状態では絶縁体と同じ電子の配置をしていますが,バンドギャップのエネルギー巾が小さいので温度が高くなると熱エネルギーによる励起によって高いエネルギーバンドに電子が存在するようになり,電気を通すようになります。電気抵抗は温度によって大きく変化するのが特徴です。
不純物半導体
シリコンのような半導体に低濃度(〜10−5)の不純物を入れると,電子が存在できないバンドギャップの中に新しいエネルギー準位が生じて電気伝導度が高くなり,かつ常温付近で比較的安定した電気伝導度を示すようになります。不純物元素の種類により,電子を余分に持つn型半導体と,電子が不足する(正孔を持つ)p型半導体があります。




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