ビッグバン宇宙モデル
宇宙全体の運動を眺めてみると、宇宙を構成する天体が互いに遠ざかっているという姿を見ることになる。これは、1929年、ハッブルによってはじめて観測された膨張宇宙の姿である。宇宙の膨張は、一般相対性理論の一つの解としてフリードマンによって理論的に導かれた (1922年)。宇宙が膨張を続けているとすれば、宇宙は昔、現代のものより小さかったに違いない。宇宙の成長をさかのぼっていけば、過去のある時点で宇宙は空間的な点であったと考えられる。したがって、過去のある時点 (宇宙の誕生日) でわずか一点に過ぎなかった宇宙が、大爆発とともに物質とエネルギーを放出して誕生し、これまで膨張しているのだと考えることができる。このような宇宙理論はビッグバン宇宙モデルと呼ばれている。1946年にガモフらが提唱し、インフレーション宇宙論とも組み合わされて現代の宇宙理論の基礎となっている。この理論によると、宇宙に存在する水素とヘリウムの元素比やマイクロ波宇宙背景放射の観測事実をうまく説明することができる。


3K宇宙背景輻射
宇宙空間を一様に満たしている絶対温度 2.735 K のマイクロ波。1965年にペンジャスらによってはじめて観測され、ビッグバン宇宙モデルを支持する有力な証拠とされた。宇宙背景輻射探査機 (COBE) による観測では、黒体輻射として計算した理論値からのずれは1000分の1以下であることが明らかになった。ビッグバンのときそのエネルギーが電磁波として放出され、その20〜30万年後の光子が自由に飛び回れる宇宙の晴れ上がりと言われるころにはおよそ 3,000 K の温度をもつ輻射になったと考えられる。さらに、宇宙の膨張により冷却され、現在では約3Kになったとされている。この3K宇宙背景輻射には、銀河系の運動による強度の異方性があるほか、初期宇宙の不均一に由来するわずかなゆらぎが含まれている。このゆらぎを詳細に調べることで、多くの宇宙の謎が解けるのではないかと期待されている。


暗黒物質(ダークマター)
宇宙空間に存在する発光しない物質の総称。直接の観測にはかからないため、多くの謎が残されている。例えば、アンドロメダ銀河などの回転曲線の形は、銀河の光っている部分を超えて、はるか遠方まで銀河物質が広がっているのではないかと考えられている。このように、見えない物質の存在を仮定すると、宇宙現象をうまく説明できる例が多く報告されている。さらに、宇宙全体の暗黒物質の質量は、見える物質の100倍になるとも言われる。暗黒物質の候補として、
暗くて小さな星 (普通の物質だが光っていない)
ニュートリノ
理論的に予言される新しい素粒子
などが挙げられるが、未だに定説はない。暗黒物質の量は宇宙の時空曲率を左右し、宇宙の進化やその寿命を決定する大きな要素となる。


重力レンズ
一般相対性理論によると、大きな質量をもつ物体 (特に、天体など) は、その周りに重力場 (時空のゆがみ) を形成する。光は、この重力場によって曲げられて進行する。太陽の付近を通過する光の進路が角度 1.75 秒だけ曲げられる現象 (アインシュタイン効果) は、1919年の日食の際、イギリスの観測隊によって確認された。しかも、その偏向角は、一般相対性理論が予言する理論値と一致した。1936年、アインシュタインは、「異なる距離にある二つの星が、私たちから見てちょうど重なるように並ぶと、うしろの星の光が前の星の重力によって曲げられリングのように見える」という計算結果を発表した。これは、あたかもレンズによって光が集められたように見えることから、重力レンズ効果と名づけられた。また、重力レンズ効果をアインシュタインの環と呼ぶこともある。


クエーサー
1963年、おとめ座の方向にあるのを電波望遠鏡で発見された新種の天体である。その後、地球から数十億光年よりも遠い場所に約7000個のクエーサーがあることが判明している。より詳しく調べてみると、クエーサーから非常に大きなエネルギーが放出されていること、さらにX線を放出しているものもあることなどが明らかにされた。また、光源は点状で、大きな赤方偏移をもち、非常に大きなスピードで遠ざかっていることが分かる。現在では、活動的な初期の銀河ではないかと考えられている。準星あるいは準恒星状天体と呼ばれることもある。なお、莫大なエネルギーの発生機構は未だに謎とされている。


活動銀河核
非常に大きなエネルギーを放出する銀河の中心核。 活動銀河には、
セイファート銀河 (渦巻銀河、電波が弱い)
電波銀河 (楕円銀河、電波が強い)
クエーサー (もっとも強力な活動銀河核)
ブレーザー (激しい偏光と急激な変光を示す)
LINER (電離度の低い輝線スペクトルを示す)
などがある。活動銀河の多くの機構は未だに解明されていない。膨大なエネルギーを放出する機構を説明する説として、活動銀河の中心にブラックホールが存在しているとするものがある。この説によると、活動銀河はブラックホールの重力によって固く結合され、さらに周囲の物質が活動銀河核に落ち込むときに大きなエネルギーが放たれるのだとされる。確証を得るには、さらに詳細な観測を行い、一つ一つ検証していくことが必要である。


ブラックホール
一般相対性理論の一つの帰結として、ブラックホールの存在が予言されている。このブラックホールに吸い込まれると、そこから二度と出てくることはできない。たとえ光であってもその中に吸い込まれてしまうので、この天体は暗黒である。そこで、ブラックホール (暗黒の穴) と名づけられた。理論的には、天体の半径がその質量によって決まる臨界値 (シュバルツシルト半径と呼ぶ) よりも小さくなったときに実現する。例えば、超新星爆発によって中心部に残った残骸の質量が太陽質量の3倍以上のときに、シュバルツシルト半径よりも小さい領域が一点に収縮 (重力崩壊) し、ブラックホールが形成される。はくちょう座のX線星「X-1」など数例がブラックホールの候補として挙げられている。また、近接する星と連星系をなし、相手の星の大気を吸い込むことによってX線を放出しているとする観測結果も発表されている。さらに、原始宇宙の非等方性に由来するミニブラックホールの存在や銀河中心核、クエーサーの中心部がブラックホールであるという説も興味深い。


中性子星
太陽質量の8倍以上の質量をもつ恒星が超新星爆発を起こしたときに、中心部に残骸として残る超高密度 (〜1015 g/cm3) の中性子のかたまり。このときの超新星爆発をタイプ II の超新星爆発と呼ぶ。通常、天体は中性子、陽子および電子の電磁的相互作用 (または強い相互作用) によって形成されている。ところが、大きな質量をもつ天体では、重力相互作用がこれらを上回り、圧力 (電子の縮退圧) に抗して重力崩壊を引き起こす。このとき、電子は陽子に吸収されて中性子となり、中性子の縮退圧によって形を保とうとする。これが中性子星であり、一つの巨大な原子核と見ることもできる。中性子の半径は、およそ10km である。また、その質量は、太陽質量の1.4倍よりも大きく、3倍よりは小さい。この質量が3倍よりも大きくなると、ブラックホールとなる。中性子星は高速で自転し、さらに強力な磁場を発生させている。このとき、ミリ秒周期の電磁波を放出するパルサーとして振舞う。


超新星爆発
星がその最終局面で爆発し、周囲にガスやエネルギーをまき散らす現象。極大光度が、-15 〜 -20 等級 (太陽光度の1億〜100億倍) となって観測される。超新星1987Aは、爆発当初から観測が行われた最初の例である。超新星爆発には、その種類によってタイプ I とタイプ II の二種類に分類される。タイプ I の超新星爆発は、白色矮星において中心部で炭素や酸素の核反応が爆発的に起こり、全体が吹き飛ぶ現象である。一方、タイプ II の超新星爆発は、太陽質量の8倍以上の質量をもつ星において、鉄の中心核は重力崩壊して中性子星またはブラックホールになり、外層は爆発して周囲に飛び散る現象である。




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