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フォトンファクトリーユーザーの西川惠子氏が日本結晶学会西川賞を受賞

物構研トピックス
2020年12月 1日

フォトンファクトリー(PF)のユーザーである豊田理化学研究所フェロー・千葉大学名誉教授の西川惠子氏が、日本結晶学会の西川賞を受賞しました。西川賞とは、長年に亘って結晶学に対する貢献が特に優れた研究者に対して授与されるもので、11月27日にオンラインで開催された日本結晶学会年会にて授賞式及び受賞講演が行われました。受賞テーマは「複雑凝集系を対象としたゆらぎの構造科学」です。

西川氏は、長年PFにおいて小角X線散乱法を中心に種々の手法を相補的に使い、物質科学におけるメゾスケールの『ゆらぎ』現象を対象に、独創的な研究を進めてきました。ゆらぎは平均からのズレを表す概念であり、空間的な分子分布のズレ(静的ゆらぎ)や時間的変動(動的ゆらぎ)は、対象とする系の構造・物性を決め、その後の時間発展の駆動力となる物理量です。しかし、非常に微視的な現象のため、その観測は困難を極めました。西川氏は、小角X線散乱法を巧みに駆使して観測の困難さを打ち破り、物質科学でゆらぎが顕在化する種々の現象を調べ、静的ゆらぎを定量化する観測方法を確立することに成功しました。また、イオン液体と呼ばれる物質群が、相変化の動的ゆらぎを実験的に追跡できる系であることを見出し、その現象の観測に世界で初めて成功しました。これらの成果は学問的に高く評価されているのみならず、その後のゆらぎをプローブとした複雑凝集系の構造物性研究の広がりにおいても重要な役割を果たしています。

さらに、西川氏は各学会誌に多くの解説記事を書かれており、また科研費特定領域研究の領域代表や研究会世話人なども務め、小角X線散乱法やイオン液体研究の存在感を大いに広め、新しい見地に立った構造科学を創成したことが高く評価されています。また、PFにおいても、研究成果を出すだけでなく、小角散乱ビームラインの運営や研究会などへの協力において多大な貢献をされています。

日本結晶学会年会における授賞式の様子(右上が西川氏、左上は山縣ゆり子学会長、下が賞状と記念品の楯)
日本結晶学会年会における受賞講演の様子(西川氏がよく利用したPF旧BL-15Aの実験ステーションが紹介されている)

西川賞受賞講演要旨複雑凝集系を対象としたゆらぎの構造科学(西川 惠子 氏)

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