物構研では、加速器ベースによる安定で高品質な放射光・中性子・ミュオン・低速陽電子を、主として学術研究を目的とする多数の外部利用者に提供することで、幅広い研究・利用分野での研究成果創出に寄与するだけでなく、物構研所員みずからも関連する研究分野を先導する先端的研究を行うことも任務としています。そこで、特に後者の任を果たすべく、物性科学分野の研究を先導する目的で2009年度に所内研究組織として設置されたのが構造物性研究センター(CMRC:Condensed Matter Research Center)です。構造物性研究センターでは、物構研の最大の強みである放射光・中性子・ミュオン・低速陽電子という複数の量子ビームプローブの協奏的・相補的な利用による相乗効果を主要な目標とし、プローブ毎の所内研究組織を横断的につなぐとともに、外部研究者との密接な研究協力により、独創的かつ先端的な研究を展開し、当該分野での世界的研究拠点となることを目指して活動しています。
物構研を巡る研究環境は常に大きく変化しつつあり、大強度陽子加速器施設(J-PARC)では、世界最高水準のビームを使った中性子・ミュオン利用研究が進展するとともに、放射光科学実験施設でもビームラインの増強・統廃合などが戦略的に進められています。構造物性研究センターでは、これらの変化を捉えつつ研究を先導するために、現在の物性科学分野の中で重要であると考えられる強相関電子系、表面・界面系、極限環境下物質系などを対象に構造物性研究を推進しています。
構造物性研究センターは物構研所長のもとに組織されます。放射光実験施設・中性子科学研究系・ミュオン科学研究系という、共同利用を推進するための研究施設(ハードウエア)を基盤とした研究系を縦糸とすると、構造物性研究センターはマルチプローブを利用した独自研究を行ない、これらの研究系を横断した横糸の役割を果たします。