CMRC 構造物性研究センター

KEK

構造物性ユーザーグループミーティング開催報告

岡山大学 津島キャンパスでの日本物理学会の第65回年次大会に合わせて、
恒例の構造物性ユーザーグループミーティングを開催した。
前回の物理学会より、学会会場でのインフォーマルミーティングと、
食事をしながらの話し合いの場の2部構成となりましたが、
今回も、多くの方の参加頂き盛大に執り行うことができた。
詳細を以下にまとめる。

<構造物性インフォーマルミーティング 第一部>
日時: 3月21日 (日) 17:30-19:00
場所: 物理学会 GD会場

1. PF構造物性UG 世話人挨拶
最初に、PFの構造物性ユーザーグループの世話人の東北大学の野田氏の方から、
『PFのユーザーグループである「PF構造物性ユーザーグループ」の
親睦会と情報交換の場として10年以上前に自然発生的に起こった会合ですが、
初期の段階から、原子炉の中性子やSPring-8あるいは物性研からの参加と報告
があり、出来るだけ全日本規模での会合としていこうという認識がありました。
前回より物理学会でのIMとなりましたので、J-PARCの中性子とミュオンも加わり、放射
光・中性子・ミュオンの施設を中心に、構造物性全般の情報交換の場として進
めていきたいと思います。』との挨拶がなされた。


2. 物構研施設報告
・構造物性研究センター(CMRC)
CMRCセンター長 村上氏より、このセンターの組織説明として、
縦糸として4つ研究グループが存在し、横糸として現在5つの研究プロジェクトが走っていること
が紹介された。次に、センターの目指すサイエンスを、
「グリーンイノベーションの基礎を作る構造物性研究」として紹介し、
その中で走る5つのプロジェクトの説明が簡単になされた。
さらに、センターが関わる放射光・中性子・ミュオンの施設の紹介をした。
また、センターの日頃の研究活動ということで、
物構研シンポ・CMRC全体会議・筑波大学との連携・CMRC研究会
などについて説明された。

・ミュオン施設
J-PARCでのミュオン施設の現状が、門野氏より説明された。
特に、1つのビームポートの利用しか出来ていないものの、
ついにビーム強度が世界一となったこと、
一方、アプリケーションの整備がまだまだであることが説明された。
最後に、次の計画として、超低速ミュオンがあり、表面状態の測定に適していることなどの
メリットが説明された。

・中性子施設
KENS装置建設計画については、瀬戸氏より説明された。
すでに、立ち上がり利用フェーズに入りつつあるビームラインの
説明や、今後建設予定のビームライン・装置建設の予定について説明された。
また、これらの建設・利用に合わせて立ち上がった、複数のS課題についても
説明された。
その後、これらの建設・利用に関わるKENSの人員配置に関して、
メンバー・担当ビームラインの紹介もされた。

・放射光施設
構造物性ユーザーグループの関係するPF・PF-ARのビームラインの現状について、
中尾(裕)氏より説明された。
基本的に、各ビームライン順調に共同利用に供されていることや、
この秋、冬にかけて強化してきた測定機器について説明された。
また、ここ数年、BL-4Cの4軸回折計のΧ軸部より異音が発生しているため
HUBER氏に見てもらったところ、重症であることがわかり、
この夏にドイツに修理に行くことが説明され、ユーザーに了解を求めた。
後、BL-3Aの1つの目玉である、移相子による偏光制御を利用した、
磁気散乱の観測がようやく出来始めたことも報告された。
最後に、BL-16Aで行っている共鳴軟X線散乱のための、
2軸回折計の改造、立ち上げ状況や、最近の研究に関して
簡単に紹介された。

3. J-PARC報告
J-PARC全体については、JAEA 新井氏が説明した。
まず、これまでのJ-PARCの立ち上げの歴史と、現在得られている
ビームが、エネルギースペクトル、時間構造ともに、
驚くべきほど当初の計算通りになっており、順調であること、
また世界の他の施設に比べてかなり安定な運転ができている事が報告された。
次に得られた中性子ビームの利用として、ビームラインの各装置の
説明とともに、最近の実験結果について紹介された。
特に、同じ出力をもつ他の施設と比較して、格段のS/Nでかつ、一挙に測定が
できるということで、通常見過ごしがちな期待しないエネルギー・Q領域での
発見につながっているという報告が印象的であった。
また、最近のヘリウム3の世界的な供給不足によって、中性子の検出器をどうするかが
大問題となっており、ヘリウム3フリーの検出器の開発が国際協力のもと行われていることも
報告された。
最後に、J-PARCでの実験結果は、J-PARC標準データフォーマットで
中性子1個1個のイベント情報として保存されること、
このため莫大なデータ量となるものの
実験後に解析ソフトを用いることで任意の解析が出来るということで
極めて有効なデータ保存形式であることが紹介された。

4. その他の報告
次に、JRR3MとJ-PARC関係の報告として、東北大野田氏より3つの報告があった。
(1) ここ数年、韓国と共同で開発してきた2次元PSD検出器が順調に動き始め、
同検出器を用いた構造解析が韓国で出来るようになって来たこと、
日本用の検出器の購入も出来たものの、ヘリウム3の高騰のため、一部のテストしか
できていないことが報告された。
(2) J-PARCでの単結晶を用いた構造物性研究用の装置の建設が、
共用法で通ったことが紹介された。
(3) 最後に、J-PARCのS-HRPDでのS課題の話と、装置の性能の現状が報告された。

5. トピックス
最近のPF BL-16Aでの共鳴軟X線散乱研究の進展が、PF 久保田氏より
紹介された。最初に、BL-16Aの特徴と軟X線回折装置の概要が紹介されるとともに、
共鳴軟X線散乱による研究のメリットが説明さいれた。
その後、人工超格子 [(LaMnO3)m(SrMnO3)m]n の系の最近の研究の進展とともに、
測定したての共鳴磁気散乱の実験結果、さらには薄膜系の磁気構造解析の可能性が説明された。

6. その他
PF河田氏より、IXS2010( http://www.esrf.eu/events/conferences/ixs2010)について紹介された。
この秋にグルノーブルで開催されるということと、
若手へのサポートも検討中とのことですので、是非参加を検討下さいとのことでした。

<構造物性インフォーマルミーティング 第二部>
日時: 3月21日 19:30より
場所: 割烹津山

今回は、物理学会会場係の池田氏により、半年前より会場を選定して
いただくとともに、当日定休日にも関わらず本会合のためにお店を
開けて頂き、完全貸切で執り行いました。
料理もお酒も気が利いており、満足いただけたものと思われます。

また、恒例の新人紹介では、
構造物性ユーザーグループミーティングに初めて参加された方々に
自己紹介をして頂いた。
M1の若い方から、大先生のT氏、F氏、A氏の紹介まで、
大変盛り上がりました。毎回、新人がいて、活気があっていいねぇ
というありがたいコメントまでいただきました。

非常に盛り上がった第二部でしたが、その後、2次会、3次会と
続いたとのことです。
次回の物理学会も、構造物性インフォーマルミーティングを行いますので、
皆様の予定に入れておいて頂ければ幸いです。


【参加者名簿】

→前回のミーティング報告はこちら