リン脂質を水に溶かすと疎水基を内側にした二重膜を作り、これが規則的に積層したラメラ構造が形成されることが知られている。そしてラメラ構造の周期は二重膜の間に働く相互作用のバランスで決まることが分かっていた。またこの系に塩を加えると違う周期のラメラ構造が共存する「ラメラ-ラメラ相分離」が起きることが知られていたが、今回我々はこの現象を詳細に調べて、この相分離が塩を加えることで溶媒に溶けにくくなる「塩析」あるいはその逆の効果である「塩溶」と関係していることを示した。図はその結果の一部で、(a)はNaClの濃度を0からリン脂質の10倍のモル比にした場合のリン脂質ラメラの比重の変化の様子を示す。また(b)と(c)はPhoton Factoryで行ったX線小角散乱実験の結果で、リン脂質に対するNaClの比を変化させることにより、1相状態から2相状態に転移している様子を示している。
本研究の成果は、以下の論文により発表された。
M. Hishida, and H. Seto,
"Lamellar-lamellar phase separation of phospholipid bilayers",
J. Phys.: Conf. Ser., 272, 012008 (2011).