ニュース

SuperKEKB加速器で電子・陽電子の初衝突を観測-Belle II 測定器による実験がスタート-

SuperKEKB加速器による電子・陽電子の初衝突 (ファースト・コリジョン) が4月25日夜に確認され、Belle II 実験グループのイベントディスプレイにも翌26日未明、衝突で出来た多数の粒子が飛び散るハドロン事象などが観測されました。3月19日にPhase2運転がスタートしてから1月余り、ビームの絞り込みなどの調整を繰り返し、ようやく初衝突までこぎつけた関係者からは、「困難な課題への対処を一つずつ積み重ねてきた結果」「初衝突が確認できてホッとした」「これからが本当の始まり」など喜びの声が上がっています。

SuperKEKB加速器は、小林誠・益川敏英両博士のノーベル物理学賞受賞に結びつく成果を残したKEKB加速器 (1999年から2010年まで運転) を大幅に改良したものです。衝突点に設置された新生Belle II 測定器の中心部で、電子と陽電子を衝突させ、対生成されるB中間子・反B中間子、D中間子・反D中間子、τ+・τなどの崩壊を、KEKB/Belle時代の50倍 (B中間子対500億事象に相当) も生み出し、その様子を詳しく分析することを計画しています。

SuperKEKB加速器は2016年2月から約5ヶ月間、衝突なしでビームを調整し、Belle II 測定器を導入可能な環境に整えるためのフェーズ1運転を行った後、2017年春にはBelle II 測定器を衝突点にロールイン。秋から冬にかけて、ビーム衝突点用超伝導電磁石 (QCS) を両側から挿入して合体させるとともに、陽電子ビームの広がりを小さくするためのダンピングリングの立ち上げ調整などを行い、今年3月19日からフェーズ2運転をスタートさせました。その後、3月21日に電子リング、3月31日に陽電子リングへのビーム蓄積 (定常的にビームがメインリングを周回する状態) を達成し、両方のビームを安定させながら衝突点で絞り込み、電子ビームと陽電子ビームのタイミングと軸を合わせる調整を、3週間以上かけて慎重に進めて来ました。

SuperKEKB加速器の調整は25日夜に大詰めを迎え、衝突点で電子・陽電子両ビームのタイミングと、垂直方向の軸を合わせる最後の調整が午後8時15分ごろ終了すると、SuperKEKB加速器中央制御室に30人ほど集まった関係者から自然に拍手が沸き起こりました。これを受けて、Belle II 実験グループはBelle II測定器の中央飛跡検出器 (CDC) をはじめとする検出器群の電圧を上昇させる準備に取り掛かり、25日午後10時過ぎから観測を開始しました。

初めのうちは電子・陽電子がビームガスに当たって起きるイベントが多く、反応の様子を表示するコンピュータ画像「イベントディスプレイ」で初衝突を確認できませんでしたが、2時間半後の26日午前0時38分、多数の粒子が飛び散る反応が確認され、実験グループは「ハドロン事象が起きたと見られる」と判断しました。これと前後し、電子、陽電子が衝突点でぶつかり、ほぼ反対方向に飛び散るBhabha散乱と見られる反応も観測されました。その後、物理ランは翌朝午前8時半まで継続され、B中間子、反B中間子の対生成を伴うと見られるものなど複数のイベントが確認されました。

SuperKEKBプロジェクトは、KEKがホストし、25カ国・地域の研究者750人以上で組織するBelle II 実験グループで運営されています。実験グループは今後、今年7月までフェーズ2運転を継続し、SuperKEKB加速器の調整とBelle II 測定器でのデータ収集を続ける予定です。また、夏から秋にかけ、Belle II 測定器の中心部に搭載中のビームバックグラウンド測定装置 (BEAST) から、本番用の崩壊点位置検出器 (VXD) への交換作業などを行い、2019年2月から予定されているフェーズ3運転 (本番の物理ラン) に備える計画です。

詳しくはこちらから。

プレスリリース本文

リンク

関連リンク

ページの先頭へ