Shota

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近年、日本ではゲリラ豪雨と呼ばれる局所的な大雨による災害が増えています。 この問題に対し、ゲリラ豪雨の「予兆の予兆」を捉えることで約1時間前の高精度予報が可能な革新的気象観測装置 KUMODeS(クモデス) のプロトタイプを素核研の田島治准教授と長崎岳人博士研究員が開発しました。

今回は、このKUMODeSがどのように「予兆の予兆」を捉えているのかを紹介します。

雨雲の発達プロセスについて

予兆の予兆の捉え方の紹介の前に、まず既存の予兆の捉え方について紹介します。

突発的な大雨が降る前には積乱雲が発生します。 既存のシステムでは、この積乱雲の大きさや発達速度をレーダーで観測することで、いつ・どこで・どれくらいの雨が降るかを予想しています。

突発的気象災害の被害を防ぐには

ゲリラ豪雨竜巻 などの 突発的気象災害 の場合、予報を出してから気象災害が発生するまで約10数分くらいしかなく、これでは、予報が出せたとしても、十分な防災対策ができません。

これは、雨雲が発生してから観測するという既存のシステムでは、仕方のない問題なのですが、過去に起きた気象災害の中には十分な防災対策を取ることができなかったため、被害が甚大になってしまったものもあります。

そのため、被害を最小限に抑えるためには、十分な対策時間が持てるようにいち早く予報する必要があり、予兆の予兆を捉えることが必要になってきます。

「予兆の予兆」の正体

KUMODeSで捉える「予兆の予兆」の正体は、ズバリ、大気中の水蒸気量の急上昇です。

実は、雨雲が発生する前に大気中の水蒸気量が急上昇することは以前から知られていました。しかし、それを観測する装置はこれまでにありませんでした。

田島氏らは、宇宙を観測するための電波観測技術を応用することで、その観測を実現しました。

昨日の敵は今日の友

今回のようなアイデアをどのようにして思いついたのかと田島氏に問うと、「昨日の敵は今日の友なんだよ」という答えが返ってきました。

曰く、本来の研究対象である宇宙の果ての観測において、地球の大気は望遠鏡を曇らせる霧みたいな邪魔者だそうです。 この敵は、きちんと測定して、除去する必要があります。 この除去する技術を、逆に利用できないかと考えたところがKUMODeS開発の出発点だそうです。

写真でみるKUMODeS

測定の方法

大気中の水蒸気は、約20GHzの周波数の電波を発しています。 KUMODeSは、この電波をホーンアンテナを使って集めます。 電波は導波管を伝わり、検出器内部に輸送され、極低温に冷やされた信号増幅器を通り、スペクトラム・アナライザを使ってデータ蓄積・解析されます。

この20GHzの電波の強度の時間変化を追うことで、水蒸気量の急上昇を捉えます。

KUMODeSの特徴

最大の特徴は極低温に冷やされた信号増幅器です。 宇宙を観測するための電波観測技術はここに応用されています。 約10Kまで冷やすことで、熱雑音を減らし、従来の10倍以上の感度で水蒸気を観測することが可能です。

また、連続回転と極低温冷却を両立する技術魔法の断熱フィルターを開発したことで、レーダのような速い観測が可能になり、 その結果、全天を短時間で観測することが可能となり、気象予測のレベルにまで到達しました。

このように、全天を高速でスキャンするようなマイクロ波放射計は、まだ一般化されていません。

KUMODeSと産学連携

KUMODeSは、科学技術振興機構が推進する大学発新産業創出拠点プログラム(STARTプログラム)に採択されたプロジェクトです。 KEKだけでなく、気象研や野村證券などの外部の機関とも幅広く連携し、基礎科学の研究で培われた技術の社会還元を目指しています。

今後の展望

現在は、プロトタイプ1台だけで測定していますが、台数を増やし、多地点で観測を行うことで、気象予測の精度向上を目指しています。 また、小型化による船舶上での利用や、大気水蒸気量の異方性を補正してGPS測地の精度向上に役立てることも期待されています。

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