所要時間:約4分

量子場計測システム国際拠点、略称「QUP」拠点長の羽澄昌史教授。 /<i class='fa fa-copyright' aria-hidden='true'></i> KEK

量子場計測システム国際拠点、略称「QUP」拠点長の羽澄昌史教授。 / KEK

KEKは2021年12月16日、宇宙・素粒子研究のための新たな世界トップレベルの国際研究拠点を発足しました。拠点名は「International Center for Quantum-field Measurement Systems for Studies of the Universe and Particles(量子場計測システム国際拠点)」で、略称は「QUP(キューユーピー)」です。QUPは、量子場計測システムの研究に焦点をあてて、宇宙・素粒子研究の進展に貢献することが期待されています。QUPは文部科学省が推進する世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の採択拠点として研究活動を開始しました。

QUPの拠点長はKEK素粒子原子核研究所(素核研)の羽澄昌史教授です。羽澄教授は素核研の実験的宇宙物理研究グループが提案し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所が戦略的中型衛星に採択した宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光観測衛星「LiteBIRD(ライトバード)」計画の主任研究者も兼任しています。LiteBIRD計画は、300名(2021年12月現在)を超える国内外の研究者が参加する国際共同研究プロジェクトです。

QUPでは次の5つのミッションを達成し、科学技術に全く新しい知見を、つまり新しい「眼」を人類にもたらすことを目指します。
 1. 素粒子物理、宇宙物理、物性物理、計測科学、システム科学の融合
 2. 量子場(生成・消滅する粒子や準粒子と付随する物理量を持つ時空)を計測する新しいシステムの発明・開発
 3. 宇宙観測や素粒子実験における計測に革新をもたらし、時空と物質の真の姿を解明
 4. 以上の実践を通して手段の科学として新しい計測学(量子場計測システモロジー)の学問分野を確立
 5. 物理学にとどまらず広い分野への応用と社会実装を通して、より高次の融合研究と新たな社会的価値を創出

QUPと素核研は双方の特徴を生かした強い協力関係を築きます。そこから共同研究による成果の創出を目指します。また、研究者同士の交流を活性化させるとともに、研究のさらなる国際化も目指します。同時に、QUPは素核研を始めとするKEKの研究所、施設のみならず他のWPI機関とも連携します。それは、高次元の融合研究を生むとともに、WPI事業全体をブランドとして世界にアピールすることにもつながります。

羽澄教授はQUPが発足されることに対し、「私はQUPの発足に胸が高鳴っています。拠点長として、主任研究員をはじめとする研究者の方々の飛躍的な挑戦をサポートしたいと思います。また、トヨタグループの研究協力を得て、社会実装に向けた新たな研究を行うことも楽しみです」と語りました。そして「私自身も主任研究員の一人として、私が発案したQUPの旗艦プロジェクトであるLiteBIRD衛星に取り組みます」と続けました。

羽澄教授はまた、「『真の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい眼で見ることなのだ。』というマルセル・プルーストの言葉があります。QUPの研究の精神には、このプルーストの含蓄ある言葉がまさに当てはまります。

QUPでは、新しい眼(=量子場計測システム)を発明・開発・実装していく活動を通して、複雑なプロジェクト自体も、科学の眼で見つめていきます。最終的には『人間の営みとしての科学(主に物理学)』という側面を含んだ、『量子場計測システモロジー』という新しい学問分野を確立したいと考えています。」と目標を語りました。


リンク