活動報告

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J-PARCハドロン実験施設で、中性K中間子の非常に稀な崩壊パターンの測定を続けるKOTO実験グループが、2018年1月の活動報告書を公表し、これまでの実験の経緯と今後の計画について明らかにしました。

KOTO実験では、ビームとして飛来する中性K中間子が、円筒型の測定器内で崩壊し、生まれたπ0中間子がさらに崩壊してできる二つのガンマ線が測定器内の電磁カロリーメータ(CsI)で捉えられ、さらに他に検出できる粒子がないことを確認できれば、KL→π0ννという崩壊パターンがあったと決定づけています。

実験グループでは2013年5月の物理ランで、崩壊パターンの確率計測でKEK自身が持つ世界記録と同程度の感度を達成した後、背景事象を除去するための測定器の改良を行い、2015年4月に物理ランを再開。2016年4月にはメインバレル検出器の内側にシャワーカウンター(インナーバレル)を増設し、動径方向に飛ぶガンマ線に対する検出効率を向上させるなどの改良を随時行い、順調にデータ収集を続けています。

報告書では、測定器のCsI結晶内で生じるシンチレーション光を、下流側から光電子倍増管によって測定するだけでなく、上流側からもMPPC(Multi-Pixel Photon Counter)で測定する「両面読み出し型」に改造し、ガンマ線と中性子を区別できるようにする大規模なアップグレード計画にも触れています。

詳しくはこちらをどうぞ。

KOTO実験グループ

補足 MPPC(Multi-Pixel Photon Counter)

微弱な光でも感度よく測定できる半導体検出器の一種で、時間分解能も良いため、KOTO実験のような高レートでかつ高効率を必要とする測定器に適しています。また、光電子増倍管と比べてコンパクトで物質量が少なく、CsI結晶でガンマ線を測定する前に吸収されて失ってしまう確率を充分に低減できるメリットもあります。