活動報告

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ILC物理測定器グループが2020年7月の活動報告を行いました。ILC計画は、全長約20kmの線型加速器で電子と陽電子を衝突エネルギー250 GeVまで加速し、正面衝突させ、物質に質量を与える粒子であるヒッグス粒子を大量に生成します。そうしてヒッグス粒子と他の素粒子の間に働く力の強さ(ヒッグス結合定数)を1%レベルあるいはそれを切る精度で測定するヒッグスファクトリー(ヒッグス工場)実験です。ヒッグス結合の精密測定により、標準理論を超える物理を解明することを目指します。

前回(2019年11月)の報告以降の進展として、2020年1月末に日本学術会議からマスタープラン(日本学術会議が我が国の大型研究計画のあり方について一定の指針を与えることを目的として策定する基本構想)が発表されました。同年2月20日にはICFA/LCB会議にてICFA声明が公表されました。声明の中でICFAは日本でのILC建設にあらためて期待を示しました。さらに、「国際推進チーム」をKEKに設置する準備も始まりました。6月19日には、欧州素粒子物理戦略の更新案がCERNカウンシルで承認、公表されました。欧州素粒子物理戦略は「次期最優先コライダーは電子・陽電子ヒッグスファクトリー」と明言した上で、日本での建設がタイムリーに実現する場合には、協働してILC計画に取り組む意向を示しました。ILC計画の実現に向け、前向きな検討が進んでいます。

物理・技術開発面に関しては、2020年3月に、技術設計書(TDR)以降の測定器設計の最適化に向けた進展を総括した報告書(IDR)が完成、公表されました。IDRの中では測定器の最適化に向けた物理の検討についても記載されています。素核研ILCグループが行った解析として、新物理のシナリオ調査に必要な標準模型からのずれのパターンの組み合わせの研究や、測定器の精度を向上するための較正の結果などがIDRで報告されました。

測定器開発も順調で、例えばバーテックス検出器(VTX)においては、宇宙線テストの結果が良好でした。また、VTXを冷却するシステムの試作3号機も完成しました。この冷却システムは、液相(液体)と気相(気体)の2相のCO2を冷媒に用いており、CO2ガスの圧力のみで温度を変化させるのが特徴で、様々な異なる温度に設定したい装置に対応可能です。さらに、測定器近傍で冷却されるので、測定器まで冷却しながらCO2を運ぶ必要がなく、離れた場所に設置もできます。

実験室周りの整備に関しては、使用予定のソレノイド磁石や超電導コイルを建設予定地付近の港から実験室まで輸送する方法や障害となる場所等の洗い出しを行いました。他にも、実験で用いる陽電子源開発として、電子駆動方式(e-Driven)を検討中です。

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ILC物理測定器グループ

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