|
>ホーム >ニュース >News@KEK >この記事 | last update:05/09/08 |
||
スノーマスの夏 2005.9.8 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
〜 世界で一つの加速器を目指して 〜 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アメリカ西部を貫くロッキー山脈。その中にあるコロラド州のスノーマスは冬には高級スキーリゾートとなる風光明媚な村です。スノーマスとその隣町のアスペンは、数十年前から夏になると天文や素粒子分野の夏の学校やワークショップで賑わってきました。 8月にスノーマスで2週間にわたって開催された国際リニアコライダー・ワークショップの様子をご紹介しましょう。 強化合宿? 「ワークショップ」には「勉強会」という意味合いがあります。研究の成果を発表し合う学会とは違って、同じテーマに興味を持つ研究者が集まって議論をし、その議論の中から生まれてくるアイデアを詳しく検討して、さらに議論を進める、という研究スタイルです。 海抜約2500mのスノーマスにはスキー客向けのロッジが建ち並び、会議を開くための施設なども整っていて、日常的な仕事や暑さから逃れて議論や研究を集中的にじっくりと進めるには最適の環境です(図1)。同じテーマに関心を持つ研究者が世界中から集まるので、第一線の研究者との議論が弾み、日頃、自分の大学や研究所で研究を進めるよりもずっと早く、仕事が進みます。いわば研究者の強化合宿といえるでしょう。 電子と陽電子を衝突させる加速器、国際リニアコライダー(ILC:図2)を世界で一つ、建設しようと、加速器と測定器の専門家が8月14日から27日まで、スノーマスでワークショップを開催しました。 基本デザイン策定 全長が約40kmに及ぶ直線型加速器を地下のトンネルに建設して、質量の起源を担うと考えられているヒッグス粒子や、理論で予測されながら、まだその存在が確認されていない超対称性粒子を詳しく調べる国際リニアコライダー計画は、世界中の研究者が建設を目指して議論を進めています。 昨年8月には加速のための基本技術として超伝導加速空洞を用いることが決定され、11月には最初のワークショップがKEKで開催されました。 加速器建設を構想の段階から国際協力体制のもとで進めるために、各国から基本デザイン策定チーム(GDE: Global Design Effort)のメンバーが選出され、それぞれいくつかのサブグループを率いて、今年末までに、国際リニアコライダーの基本構成案をとりまとめることになっています。 策定チームの責任者のバリー・バリッシュ氏はワークショップの開催にあたって、国際リニアコライダー建設に向けた今後10年間の予定を示し、基本構成案のとりまとめに向けて、このワークショップで議論すべき事項について講演を行いました(図3)。 7つのワーキンググループと6つの国際グループ ワークショップは加速器本体の設計の議論と、加速器を使って実験を行なうための測定器の設計の議論の二つから構成されました。さらに加速器本体の設計は7つのワーキンググループと6つの国際グループから構成され、加速空洞、粒子源、減衰リング、一般土木工事、コスト評価、全体のパラメータ評価、などについてそれぞれ議論されました。 加速器全体の長さなどを決定する重要な要素の一つである加速勾配を決定する議論では、従来から研究開発が進められてきた加速空洞と、現在開発中の新型空洞の性能比較や、計画の拡張性などを見込んだ、熱のこもった議論が展開されました(図4)。 議論の合間の休憩時間にも、コーヒーを片手に各国のメンバーが入り乱れて議論を交わす姿がみられました(図5)。 始動した国際チーム 今回のワークショップの最大の特徴は、各国から選出された基本デザイン策定チーム(GDE:Global Design Effort)のメンバーが初めて一同に介したことです(図6)。チームは今後、基本構成を取りまとめた後、概念設計を行ないます。 また、世界規模の加速器建設チームの情報共有や広報活動を円滑に進めるために、世界各地の広報担当者がチームを組んで、ウェブサイトの運営や電子ニュースレターの発行を開始しました(図7)。 スノーマスに集まった約600人の研究者(図8)は、21世紀の高エネルギー物理学に新たな展開を築き上げた二週間として2005年の夏を振り返ることになるでしょう。
|
|
|
copyright(c) 2004, HIGH ENERGY ACCELERATOR RESEARCH ORGANIZATION, KEK 〒305-0801 茨城県つくば市大穂1-1 |