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J-PARCからの最初のニュートリノ 2010.3.18 |
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〜 T2K実験、スーパーカミオカンデで 〜 |
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T2K(Tokai to Kamioka)実験(図1)グループは、2010年2月24日6時00分、茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARCで人工的に生成させたニュートリノを、約295km離れた岐阜県飛騨市神岡町の検出器スーパーカミオカンデ(図2)において検出することに成功しました。 これは 2009年4月23日19時9分のニュートリノ生成の直接的証拠となるミューオンモニターの信号の観測、そして2009年11月22日20時25分の前置ニュートリノ検出器におけるニュートリノの初検出に引き続いて達成されたT2K実験の大きなステップです。 ニュートリノ振動とT2K実験 ニュートリノ振動とはニュートリノが飛行中に別のニュートリノに転換する現象で、ニュートリノが質量を持つことを示す直接的な証拠です。1988年に、観測された宇宙線起源のミューオンニュートリノ数が予想値よりも少ないことをカミオカンデが発表し注目されました。1998年にはよりたくさんのデータを蓄積したスーパーカミオカンデで、ミューオンニュートリノから他のニュートリノへの振動が間違いのないものであることが示されました。しかしながら、これらの実験は宇宙線から作られたニュートリノを用いたもので、ニュートリノの数・エネルギー・成分については数値計算に基づいた予想を用いるしか方法がありませんでした。自分達で生成したニュートリノの性質を、生成場所の近くで自分達できちんと測定し、ニュートリノ振動現象の検証をより強固なものにしたいというのは、研究者としては当然のことです。そこで考えられたのが加速器でニュートリノビームを作って数百キロ離れた測定器に打ち込む実験です。1999年から2004年まで行われたK2K(KEK to Kamioka)実験はその最初の実験でした。純度の高い人工のミューオンニュートリノビームを用いてミューオンニュートリノが他のニュートリノに転換することを証明しました。 K2K実験をさらに強力にしたのがT2K実験です。この実験の特長は2つ。まず、ニュートリノビームの強度をK2Kの約100倍にまでパワーアップしたことです。もう一つの特長は、ニュートリノビームが東海村と神岡の距離である295km飛行したときにニュートリノ振動が最大になるように、ニュートリノのエネルギーを 600MeV程度に合わせたことです。この結果、K2K実験では約30%程度のミューオンニュートリノが他の種類のニュートリノに転換したのに対して、T2K実験では70%以上のニュートリノが他の種類のニュートリノに転換することが予想されます。また、JーPARCからたくさんのミューオンニュートリノを打ち込めるため、転換頻度が低いことが想定されているミューオンニュートリノから電子ニュートリノへの転換現象を発見できるのではないかと期待されています。 スーパーカミオカンデのニュートリノ事象 J-PARCとT2K実験では、2009年4月の最初のニュートリノビームの生成以降、少しずつビームを調整しながら強度を上げてきました。2010年早春の時点では、設計値の1/40〜1/30程度のビーム強度で調整を進めながら実験を行っています。 J-PARCとスーパーカミオカンデでは、独立にGPSを用いてニュートリノビームの発生時間や測定器内で検出された事象の時刻を正確に記録しています。ニュートリノビームは3.52秒周期で約3マイクロ秒(0.000003秒)の間の短い時間だけ発射されるので、ビーム発射の時刻と事象が記録された時刻を見比べることにより、簡単にJ-PARCから発射されたニュートリノであることがわかるのです。 今回測定されたスーパーカミオカンデでのニュートリノ事象は、実験を開始してから連続運転に換算しておよそ40時間運転したところで観測されました(図3)。スーパーカミオカンデやK2Kの結果から推測し、そろそろスーパーカミオカンデで測定されてもいいと思われていたタイミングでの測定です。しかも事象はきれいな3リングで、幸先よいスタートと言えるでしょう。 T2K実験では最初の一年間でK2Kの結果を越える精度でニュートリノ振動を検証し、 ミューオンニュートリノから電子ニュートリノへの転換現象を前人未踏の精度で行う予定です。その後の数年間でさらに数十倍のデータを蓄積して世界最高感度で電子ニュートリノへの転換の有無を検証する計画です。
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