産業応用を推進、"未来へのバイオ技術"勉強会を開催

 

12月2日(金)、文部科学省委託事業「ターゲットタンパク研究プログラム」による産学応用を推進するための勉強会がKEKで行われました。ターゲットタンパク研究プログラムは、医学・薬学・食品・環境などに直結する機能を持つタンパク質の構造・機能相関の解析やそのための技術開発を行うプログラムで、平成19年度より5カ年計画で行われています。本プログラムによりKEKのフォトンファクトリーにはタンパク質構造解析のためのビームラインBL-1Aが整備され、これまでにも数々の成果をあげています(関連記事参照)。今回はその施設をより広く活用していただくために「構造生物学研究の解析拠点はここだ!」と題し、財団法人バイオインダストリー協会主催の第5回目の勉強会が行われ、多数の企業や団体からの参加者が集まりました。

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講演会場の様子

まず、若槻壮市KEK構造生物学研究センター長が、高難度ターゲットタンパク構造解析のために整備されたビームラインについて紹介するとともに、これまで構造解明が困難だった10ミクロン以下の微小結晶からの構造解析、結晶化も困難な膜タンパク質の構造解明など、今後の構造生物学の展望について述べました。次いで、昭和大学の田中信忠准教授が坑マラリア薬の開発に関する講演を行いました。田中氏は、フォトンファクトリーの共同利用による、医学・薬学への産業応用例として、KEKの放射光施設を用いて、マラリア原虫生育の抑制につながる酵素「PfDXR」を阻害する仕組みを詳しく構造解析した結果、新しい薬剤のアイディアがいくつも考えられたこと等を挙げ、構造生物学と医学・薬学双方の観点から産業応用の可能性に言及しました。

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タンパク質結晶化システム見学の様子

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サンプル交換システム見学の様子

その後参加者らは2グループに分かれ、施設を見学しました。構造生物実験準備棟では、タンパク質の結晶化、観察を全自動で行うタンパク質結晶化システムを見学し、その説明と実際に装置を動かしての結晶化のデモンストレーションが行われました。また、ビームラインBL-1Aでは、効率的にデータ測定を行うためのサンプル(結晶)交換システムについて、実際の実験と同様、タンパク質の結晶を設置し放射光を当て回折データを得る様子を見学しました。参加者は次々と表示されるデータ取得の早さに驚いた様子でした。

タンパク質の構造解明は多岐にわたる産業への応用が見込まれています。参加者は真剣に聞き入りつつも、終始和やかな会となりました。

関連サイト

ターゲットタンパク研究プログラム
放射光科学研究施設 フォトンファクトリー
フォトンファクトリー タンパク質結晶構造解析ステーション
構造生物学研究センター

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