ここでは、まずエネルギ−とは何か、そうして、加速器とは粒子にエネルギ−を与える機械であることを勉強しよう。
エネルギ−は、いろいろな形で保たれています。例えばボ−ルを投げた時、ボ−ルは腕からエネルギ−をもらって飛んで行きます。この時、ボ−ルは運動のエネルギ−をもっていると同時に、重力によって下に落ちて行くことでわかるように、重力の下での位置エネルギ−をもっています。ボ−ルは飛んでいる間もその質量は変わりませんが、ボ−ル自身の質量(重さ)があり、質量エネルギ−を持っていると言います。ボ−ルを投げるところから、ボ−ルが飛んで行ってどこかに落ちるまでの間、ずっとエネルギ−の総和は変化しません。これをエネルギーの保存則と言います。
さて、粒子加速器というのは、粒子に運動エネルギ−を与えて、速度を上げるための装置です。粒子を光の速度近くまで加速して、高いエネルギ−状態にするのが高エネルギ−加速器です。
粒子の加速には、電場を用います。電荷をもった粒子は、電場の中で、エネルギーをもらい速度が高くなります。これは、右の図のように、二つの電極板により電場をつくって、負の電荷をもった電子を穴から電場に入れると、正の電極板に向かって引き寄せられます。この時、電子は加速され、速度を上げて正の電極に向かいます。この時の電子の運動エネルギ−は、電場の中での位置エネルギ−が運動エネルギ−に変えられたものです。
電極間の電圧が 1 ボルトの時、電子の得るエネルギーを1 電子ボルトと言います。

1 電子ボルト=1 eV=1.602×10−19ジュ−ル

このように、荷電粒子は、電場の中で、電場からエネルギーをもらって、速度を上げる。これが、加速器の原理です。加速器の世界では、エネルギ−は上の電子ボルトで言い表します。そこで、エネルギ−の単位の呼び方を示します。

1 eV = 1 電子ボルト
1 keV = 1 キロ電子ボルト = 103 eV :1000電子ボルト
1 MeV = 1 メガ電子ボルト = 106 eV :100万電子ボルト
1 GeV = 1 ギガ電子ボルト = 109 eV :10億電子ボルト
1 TeV = 1 テラ電子ボルト = 1012 eV :1兆電子ボルト
1 PeV = 1 ペタ電子ボルト = 1015 eV :1000兆電子ボルト

日常の生活の中でも加速器は使われています。その代表がテレビやパソコンのディスプレー用のブラウン管であり、陰極からの電子が約2万ボルトの電位差の中で加速され、20keVのエネルギーを持った電子ビームとして、ブラウン管の発光面を叩くことで、光を出しています。
粒子を加速するための電場をどのように用意するかによって、各種の加速器が開発されてきました。その最初は、1932年、コッククロフト(John D.Cockcroft)、ウオルトン(Ernest T.S. Walton)によって作られた多段の倍電圧整流回路によって作られた700kV(キロボルト)の高電圧発生装置によるものでした。粒子は700 keV(キロ電子ボルト)のエネルギ−にまで加速されまます。

加速電圧のかけ方と粒子ビームの扱いによって、次のような代表的な加速器の種類があり、これから説明して行きます。

加速器の種類(加速粒子) 加速電場 ビーム軌道 エネルギー領域
コッククロフト・
ウオルトン型加速器
(陽子、イオン)
静電場 直線 2〜4 MeV
バンデグラーフ型加速器
(陽子、イオン)
静電場 直線 10 MeV
サイクロトロン
(陽子、イオン)
高周波 ら旋 数十 MeV
ベータトロン(電子) 高周波 数十 MeV
シンクロトロン
(電子、陽子、イオン)
高周波 1 TeV
線形加速器(電子、陽子) 高周波 直線 数十 GeV

さらに、加速したビームをどのように使うかということから、リングの中で電子ビームを蓄積して出てくる光を実験に使う放射光実験用加速器とか、粒子同士を正面衝突させる衝突ビーム型加速器(コライダー)などがあります。


コッククロフト・ウォルトン型加速器


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