荷電粒子が磁場の中を運動するとき軌道が曲げられます。質量m、電荷eの荷電粒子が、速度vで磁束密度Bの一様な磁場の中を、磁場に直角に運動する時、粒子に働くロ−レンツ力Fは、evBです。この時の円軌道の半径がrであれば、ロ−レンツ力と遠心力の釣り合いの条件から、

mv2/r = evB

となります。
粒子が円軌道を一周するのに要する時間は、T=2πr/v = 2π m/eB です。従って、サイクロトロン周波数と呼ばれる周回周波数は、f =eB/2 πmです。粒子の質量mはその速度vが光の速度より十分低い時には一定であるので、サイクロトロン周波数は一定であり、rとv は比例します。この性質を利用しているのが、サイクロトロンです。
サイクロトロンは、図1のように、一様な磁場を発生させる電磁石とその磁場の中に入れられた加速電極から成っています。加速電極は、平べったい缶を二つに割った形をしており、ディ−(D)と呼ばれています。この加速電極全体は真空箱の中に入れられています。陽子などの加速粒子はサイクロトロンの中心部に置かれたイオン源で作られます。加速電極には上の式で与えられる周波数の高周波電圧が加えられて、粒子は電極間のすき間(ギャップ)を通過すると電圧Vに相当するエネルギ−(V電子ボルト)を得て加速されます。粒子が半周回って、再びギャップに達したとき、高周波の位相は180度逆転しており、粒子は再び電圧Vだけ加速されます。こうして、粒子のエネルギ−は増大し、それに伴って軌道半径が大きくなるため、加速粒子の軌道はらせん状となります。一番外側の軌道に達して、最高エネルギ−になったところで、静電的に粒子を軌道から外して、加速器から外部へと導き、実験に使うのです。


図1 サイクロトロンの構成

ビ−ムは、高周波の周期に合ったパルス状のビ−ムであり、加速粒子はそのパルス毎に、かたまり(バンチ)となって放出されます。 サイクロトロンは、陽子を10〜20MeV位までに加速するのに、1930年−1960年位まで用いられました。さらに、エネルギ−の高い加速器として、円形の電磁石をセクタ−(扇状)に分割した、セクタ−収束サイクロトロン(Sector Focusing Cyclotron)が開発され、100MeV位までの加速器が今日でも稼働しています。



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