加速した高エネルギー粒子を静止しているターゲット物質に衝突させる時の有効な反応エネルギーは、標的粒子と入射してくるビーム粒子が成す重心系でのエネルギーです。ターゲットとなる粒子も、同じように加速して、正面衝突させることが出来れば、粒子反応に寄与する実効エネルギーを飛躍的に高められます。そこで、高エネルギーの電子陽電子ビーム衝突型の加速器、陽子反陽子ビーム衝突型加速器などが建設され、現在では高エネルギー加速器の主流となっています。

今、陽子が全エネルギーEに加速されて、静止しているターゲット中の陽子(質量M)に照射した時の重心系のエネルギーは、

重心系のエネルギー=(2EM)1/2=

であるのに対して、ターゲットとなる陽子も同じエネルギーで、反対方向から来て、正面衝突すると、重心系のエネルギーは

重心系のエネルギー=2E

となります。このように、重心系のエネルギーは非常に大きくなります。


シンクロトロンによる貯蔵リング型ビーム衝突型加速器
ビーム衝突型の加速器には、陽子と陽子、電子と電子のように同じ粒子を衝突させる場合、あるいは電子と陽子のような異なる粒子を衝突させる場合は、図1のように二つのリングが必要となります。しかし、同じエネルギーの電子と陽電子、陽子と反陽子の場合は、図2のように、一つのリングの中に2種類のビームを逆方向に回すことができます。こうした加速器では、図のように円周上の何個所かで、ビーム同志を衝突させることができ、効率のよい実験施設となります。

同種粒子またはエネルギーの異なる2つの粒子を衝突させる場合 同じエネルギーの電子・陽電子または陽子・反陽子ビームを衝突させる場合


線形衝突加速器(リニア−コライダ−)
電子または陽電子の円形加速器では、エネルギーが高くなると、電子が偏向電磁石の中で軌道を曲げられるとき、強い電磁波(放射光)を放射して、ビームのエネルギーが減衰してしまいます。従って、100GeV以上の電子ビームを得ることは困難です。そこで、図3のように、電子と陽電子をそれぞれ、線形加速器で逆方向に加速し、正面衝突させるリニアコライダーが開発されています。この場合、衝突したビーム粒子は、一度の衝突で失われてしまうため、円形軌道の場合よリ、軌道の安定性やビーム粒子の密度を上げなければなりません。


線形衝突加速器


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