反物質の世界がないのはなぜ?
さて、全ての粒子にその反粒子が存在し、それらが出会うと対消滅してエネルギーになってしまうのだとすると、もし私たちの近くに反粒子だけでできているような反物質があったら大変です。もし私たちの銀河系の近くに反物質でできた反銀河系があったら、私たちの銀河は消し飛んでしまうでしょう。それなのに、私たちの身の回りだけでなく宇宙を見渡す限り反物質の世界などどこにも見あたりません。これは、私たちにとってはとても幸運なことですが、いったいどうしたわけでしょうか?粒子の法則と反粒子の法則が完全に同じものであったとしたら、これは全く理解できないことです。

ロシアのサハロフ博士、日本の吉村太彦博士、アメリカのワインバーグ博士らによって提唱された仮説は次のようなものです。

もともと、宇宙創成直後の超高エネルギーの世界では、粒子と反粒子が対消滅、対生成を繰り返し、それらは同数あった。
それらの大部分は宇宙の冷却に伴って対消滅してしまった(消滅のエネルギーが宇宙の膨張で薄まって、再度対生成できなくなった)。
しかし、粒子と反粒子で反応法則にわずかな違いがあり、その差の分だけ粒子だけが残った。

この仮説では、粒子と反粒子でそれを支配する法則がわずかに違う点が決定的に重要です。この粒子と反粒子のわずかな違い、これを「CPの破れ」と呼んでいます。この破れの本質は、未だ謎に包まれています。しかしながら、クォークが6種類以上あれば、この破れが自然に理論に現れることは、小林と益川によって指摘されています。
この理論を検証し、また、CPの破れの本質に迫ろうとするのが、Bファクトリーの実験です。




宇宙創成の瞬間
新粒子発見、20世紀なかば
クォークとレプトン
秩序あるクォーク・レプトン
粒子と反粒子
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自然界の4つの力
力の大統一と素粒子理論
ニュートリノとニュートリノ振動
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