19世紀末の最初の素粒子発見以来、素粒子の世界の研究が進めば進むほど、物理学者は、『自然は、それがいかに複雑に見えても、その究極においては非常に単純である』という確信をますます深めてきました。
物質が、少数のクォーク、レプトンからできていること、そして、それを支配しているのがたった4種類の力であることが分かりました。しかもこれらの力は全て力の粒子を交換することによって働くことが分かったのです。これは20世紀の科学の生み出した偉大な成果の一つです。
それらの自然力の4つの力とは、
重力
電磁気力
弱い力
強い力
です。
重力
私たちにとって最もなじみ深い力は重力です。すべての素粒子に引力(万有引力)として働きます。重力は遮られることなく無限遠まで働くため、マクロの世界を支配しています。地球、太陽、銀河系などの天体の運行をつかさどり、巨大な宇宙の構造を作り出しています。
みんながよく知っている、私たちを地球に引きつけている重力は、重力子の交換によって伝わります。重力子は質量を持たないので無限の遠方までとどきます。
重力=重力子の交換
重力は質量に比例します。一方、質量はエネルギーと等価です。
E=mc2
従って、重力はすべての粒子に働きます。しかし、素粒子の質量は非常に小さく、現在の加速器で到達できるようなエネルギーでは素粒子間の重力は非常に小さく無視できますが、ビッグバンによる宇宙創成直後のような超々高エネルギーでは重要になってきます。
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電磁気力
次になじみ深い力は電磁気力です。電磁気力は電気力と磁気力の2つの力として私たちの身近にあります。この一見違った2つの力が実は同一のものであることは、19世紀には、すでに解明されていました。電磁気力が現代のエレクトロニクス文明の基礎をなす力であることは言うまでもありません。
よく知られている静電気や磁石の力だけでなく、私たちが日常経験する重力以外のすべての力は電磁気力です。 特に、電子と原子核を結びつけ原子を作る力、原子同士を結びつけ分子を作る力は、電磁気力です。 電磁気力は、光子の交換によって伝わります。光子は質量を持たないので、遮られなければ電磁気力も遠くまでとどきます。
電磁気力=光子の交換
電磁気力は電荷に比例します。電荷を持った粒子は、目に見えない光子(仮想光子)をお手玉しながら走っています。言い換えれば、電荷粒子は光子の衣を着ています。
電子が電磁石などで急に向きを変えられると、光子の衣が引きちぎられて飛び出します。これが放射光です。
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弱い力
弱い力はとても短い距離の間でのみ働きます。通常、電磁気力よりもはるかに弱いのでこの名前がつけられました。すべてのクォーク、レプトンに働きます。
これは、原子核のベータ崩壊、中性子、パイ中間子などの粒子の崩壊の原因となる(粒子の種類を変えることのできる)力です。日常は経験することのない力ですが、ミクロの世界では重要な役割を果たしています。
弱い力=W,Z粒子の交換
弱い力を媒介する力の粒子、W、Zは大きな質量を持っています。そのため、力の本質的な強さを表す結合定数は電磁気力と同程度ですが、力が届く距離が非常に短く、力の見かけの強さが弱く見えるのです。力の強さが弱すぎて、日常世界で感じることはありません。
W粒子や、Z粒子は、もともと光子と同様に質量を持たないゲージ粒子ですが、真空中のヒッグス場との相互作用により質量を持ったと考えられています。ヒッグス場との相互作用がなければ、これらの力の粒子の運ぶ力は、もともとは同じものだと考えられます。そこで、現在では、光子の伝える電磁気力と、WやZが伝える弱い力は、電弱力としてまとめられています。
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強い力
強い力は全てのカラー荷を持つ素粒子に働きます。電磁気力の 100 倍程の大きさを持つ最も強い力なので、この名前がつけられました。クォークを結びつけ、陽子 (p) や中性子 (n) を作り、また陽子同士の間に働く電気的な斥力に打ち勝ち、中性子とともに原子核を作ります。
強い力=グルーオンの交換
強い力はカラー荷に比例します。クォークのカラー荷には、赤、青、緑の三原色(もちろん本当の色ではない)があります。強い力を媒介する力の粒子グルーオンには白を除く色の組み合わせ 。
3(赤、青、緑)×3(反赤、反青、反緑)−1(白)=8
つまり8種類あり、いずれも質量を持ちません。しかし、グルーオン自体がカラーを持ちグルーオンをお手玉するので、力は距離が離れるほど強くなり、核子(陽子、中性子)の大きさ程度以上の距離になると全体として白色の状態しか安定に存在できません。(カラーの閉じこめ)
従って、強い力の到達距離は、グルーオンが質量を持たないにもかかわらず短く、日常感じることはありません。
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宇宙創成の瞬間
新粒子発見、20世紀なかば
クォークとレプトン
秩序あるクォーク・レプトン
粒子と反粒子
反物質の世界
自然界の4つの力
力の大統一と素粒子理論
ニュートリノとニュートリノ振動
ヒッグス粒子と質量
素粒子(クォーク・レプトン)
陽子・中性子(ハドロン)
原子核
原子・分子
物質
生物
人間
地球
宇宙
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