高エネルギー加速器研究機構
環境報告2007
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J-PARC建設と地下水環境の保全 〜井戸枯れ、松枯れの防止〜

  J-PARC建設地は海岸線から最も近い所で数10m、工事の範囲は東西約1km、南北約2kmの広範囲に渡っています。加速器トンネルとビームトンネルは放射線遮蔽のため地下に建設されますが、建設にあたっては大量の土砂を自由地下水面以深まで掘削する必要があり、それに伴い大量の地下水の汲み上げが必要になります。このことによる敷地周辺の地下水低下や海からの塩水の引き込みが予想されました。
  そのため、J-PARC建設地周辺の地下水環境を保全するとともに、臨海部での大規模開発に伴う地下水動態の影響を調査研究するため本機構、日本原子力研究開発機構、産業技術総合研究所の3者共同研究を組織し、工事着手前から連続的な地下水観測と地下水の変動予測解析を行ってきました。
  J-PARC建設地の大部分は動植物の環境保全地区に指定され、砂丘上には砂防林としてクロマツが生育しています。さらにJ-PARC建設地に隣接する地区では地下水を生活用水の一部として利用しており、建設工事による地下水の枯渇や塩水化による松枯れ防止、隣接地区の地下水環境の保全が必要で、それぞれ地下水観測による監視と予測解析に基づいた対策を行ってきました。

復水設備
  地下水の変動予測解析の結果、工事の進捗とともに近隣地区で最大1m程度の地下水位低下が予測されました。そこで、対象地区の地下水の流れに着目し、対象地区の地下水を建設地側に引き込まないよう、地表面に溝を掘り、その中に有孔管を設置して水を涵養させる復水設備を考案しました。長さ30〜50m、溝の深さと幅がそれぞれ1mのユニットを14設置し、総延長約600mの復水設備をつくりました。 地下水位の連続測定と注水量の制御により、対象地区の井戸水位の低下を防ぐことができました。

復水管敷設

施工完了

松枯れ対策
  松根域である深度1m以下の地表付近の水分張力と水分量を観測しています。これまで、深度40cm以深で水分量5%以下になることはなく、工事による影響はほとんど受けていないことが確認されています。

浅層土壌水分観測状況

保安林
  保安林(村松海岸砂防林)については、最小限の伐採となるよう要望され、その趣旨にそった計画を立てました。また、近隣住民等への説明を行い、関係機関と協議を重ね伐採を行いました。